図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
「将来の夢は、作家さんのサポート役になることなんです。だから、今一番自分の中でブームである涼風先生の元で、経験を積みたいなって」
まっすぐに私を射抜く彼の瞳には、
一欠片の濁りもなかった。
学校中の注目を集める人気者の口から出たのは、あまりに控えめで、けれど誰よりも執筆者の孤独に寄り添う「夢」の形。
けれど、自分の実力を誰よりも疑っている私には、その言葉を素直に受け入れるだけの器がなかった。
『私は……ただの、無名の作家です。……私のところで経験を積んだって、なんの意味にもなりませんよ』
俯きながら絞り出した声は、自分自身を卑下する言葉。
こんな小さな世界で、細々と文字を綴っているだけの私に、彼の未来を背負う価値なんてあるはずがない。
「意味はあります。もっと自分の作品に、自信を持ってください」
遮るように放たれた言葉は、
驚くほど強くて、温かかった。
彼は一歩、私との距離を詰める。
「元々、本なんて好きじゃなかった俺を、この世界に引き連れてきたのは――他ならない、あなたなんですから」
その言葉が、私の凍りついた心に熱を帯びて
染み渡っていく。
『水越ふうか』としての私ではなく『涼風璃杏』としての私の魂を、彼は誰よりも深く、そして正しく肯定してくれた。
誰にも言えない秘密だった私の物語が、今、目の前の少年の手によって、新しい色を帯びて動き出そうとしていた。