図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
『放課後の、皆さんが部活をしている時に……ここで、いつも書いています。気が向いた時だけでいいので、来てください』
精一杯の譲歩だった。
あまりに眩しい彼を、私の暗い殻の中に閉じ込めておくのは申し訳ない。
だから、「気が向いた時だけ」という逃げ道を作った。
「毎日きます」
食い気味に返された言葉に、心臓が跳ねる。
冗談を言っている風でもなく、彼は至極当然のことのように、真っ直ぐに私を見つめていた。
『あの……蓮見さん、部活は?』
てっきり、サッカー部やバスケ部で汗を流し、大勢の仲間に囲まれているものだとばかり思っていた。
それこそが、彼のいるべき「光の世界」のはずだから。
「入ってません。帰宅部です」
事も無げに言ってのける彼に、
私は二の句が継げなかった。
これだけの人気者が、放課後を自由に使っているなんて。
『……毎日、本当に、いいんですか?』
「俺がいたいから、いるんです。……じゃあ、明日もここで」
そう言って軽く手を振ると、
彼は颯爽と図書室を後にした。
残されたのは、静寂と…
まだ熱を持ったままの私のスマートフォン。
明日から、この静かな図書室の隅っこに、彼が座る。
それは、私の孤独だった執筆活動が、劇的に色を変えていく予感だった。