図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
そう思った瞬間、私の意志とは裏腹に、
熱い雫が頬を伝ってこぼれ落ちた。
一度溢れ出した感情はもう止められなくて、
視界が滲んで彼の顔が歪んで見える。
「えっ、ふうかちゃん!? 泣かないで。ごめん……俺、変なこと言ったかな」
うろたえながらも、彼は必死に私を覗き込んでくる。その慌てた様子が、彼が心から私のことを大切に想ってくれている証拠のようで、余計に胸が締め付けられた。
『違うんです。……あまりにも、その……。あなたが編集者になろうと思ったきっかけが、心に響いて……』
掠れた声で、なんとかそれだけを伝える。
一度は絶望を味わったはずの彼が、その痛みを抱えたまま、私の物語を「希望」だと言ってくれた。
その事実が、どれだけ私の救いになったか、
彼には想像もつかないだろう。
「……ありがとう。俺がつまずいてしまった時の話を、笑わずに聞いてくれて」
彼は少しだけ照れくさそうに、
けれど愛おしむような眼差しで私を見つめた。
そして、戸惑う私の頬にそっと手を伸ばすと、
流れた涙を指先で優しくすくい取る。
「君がそうやって泣いてくれるくらい、俺の夢を大切に思ってくれるなら……俺、もっと頑張れる気がするよ」
触れられた指先の熱が、涙で冷えていた肌にじんわりと伝わってくる。
図書室の片隅、二人だけの空間。
そこにはもう、学校一の人気者と地味な陰キャという壁なんて、どこにも存在していなかった。