図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
顔なんて見なくたって、その声だけで
誰なのか分かってしまう。
低くて、どこか聞き心地のいい、
テレビの向こう側の人間のような特別な響き。
だって、この声は。
学校一の人気者として、常に眩しいスポットライトの中にいる、あの人の声なんだから。
終わった。私の、唯一の時間が……。
脳裏に、最悪のシナリオが走馬灯のように駆け巡る。
もしこの人に、私の秘密がバレてしまったら。
明日には「あの地味な水越が、実はポエムみたいなのを書いてるらしいぜ」なんて噂が、光の速さで校内に広まっていくに違いない。
そうなれば、私みたいな陰キャが何をしてるんだって、指をさされて笑われる人生を、卒業まで送らなければいけないんだ。
喉の奥がキュッと締まり、
視界が恐怖でチカチカと点滅する。
この図書室の片隅で、誰にも邪魔されずに物語を紡いでいた「涼風璃杏」としての私は、今、この瞬間に殺されてしまった。
…逃げなきゃ。
そう思うのに、椅子の脚が床を擦る音を立てることさえ怖くて、私はただ、カバンを握りしめたまま石のように固まっていた。