図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
家に帰ってもなお、執筆の手は止まらなかった。
お母さんが持ってきてくれたおにぎりを、味も分からないままサッと胃に流し込み、私はすぐにスマートフォンの光の中へと戻る。
書き上げては、蓮見くんに送る。
彼からの「最高」という言葉を糧に、また次の一行を紡ぐ。
そんな熱を帯びた繰り返しの中にいた時、
画面の上部に小説アプリの通知が1件、音もなく表示された。
『……なんだろう……』
期待に胸を躍らせ、指先が踊るように画面を叩く。
蓮見くん以外にも、私の物語を見つけてくれた人がいたんだ。その事実だけで、視界がぱっと明るくなったような気がした。
けれど、開いた「感想ノート」に並んでいたのは、私の淡い期待を無残に踏みにじる、冷たい言葉の羅列だった。
【なんか、現実味がない】
【作り話って分かりやすすぎてちょっと……】
『……っ……』
喉の奥が、熱い塊を飲み込んだ時のように痛む。
私一人で書いていた時なら、こんな言葉、いつものことだと笑い飛ばせたかもしれない。
でも、この作品は違う。
蓮見くんが自分の痛みを打ち明けてまで、「編集者」として私に寄り添い、二人三脚で育ててきた大切な、大切な物語なのだ。
自分の努力が否定されるより、何倍も苦しい。
彼がくれた魔法のようなリライトも、私に掛けてくれた優しい言葉も、全部まとめて泥を塗られたような気がして。
悔しくて、申し訳なくて……。
溢れそうになる涙を堪えながら、私は震える指で、ただ画面をじっと見つめることしかできなかった。