図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
「……隣、座るね」
荒かった彼の呼吸がようやく落ち着きを取り戻すと、彼はゆっくりと、私の隣の冷たい床に腰を下ろした。
そして、震える私の背中に、そっと、壊れ物を扱うような手つきで温かな掌が添えられる。
「……感想ノート、見たんだね」
『……っ……』
心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。
ああ、そうか。
あのノートは公開されているものだから、熱心な読者である彼が気づかないはずなんてなかったんだ。
「ごめんね。それ、どうしても謝りたくて」
『……蓮見くんが謝ることなんて、ひとつも……。悪いのは、あんなことを書く人や、書かせてしまうような……私の実力不足で……』
「ううん。謝らなきゃいけないんだ。……あの感想ノートを書き込んだのは、俺のクラスメイトの女子なんだ」
『え……っ……』
思考が真っ白に染まった。
見も知らない誰かからの、無責任な批判だと思っていた。
けれど、その正体は、私のすぐ近くにいる……。
そして、何より彼に近い場所にいる人物だったなんて。
添えられた彼の手に、ぎゅっと力がこもる。
その熱が、今まで感じていた悲しみとは違う、もっと複雑で鋭い予感を私に突きつけていた。