図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
「あのクラスメイトが書いたもの以外、批判的なコメントなんて一つもなかったんだ。むしろ、あの嫉妬にまみれたコメントに対して、『この作品の良さがわからないの?』って、他の読者が反論しているくらいだよ」
『…………』
信じられなくて、スマホを握る指先がかすかに震える。
暗闇の中で一人、あの言葉だけが世界のすべてだと思い込んでいたけれど、本当はもっと広くて温かい世界が、画面の向こう側に広がっていた。
「俺以外にも、君の物語を待っている人がたくさんいる。……それにね、ふうかちゃん。俺は、君からどんな原稿が届いたとしても、笑ったり貶したりなんて絶対にしない」
隣に座る彼の声が、スッと私の心に染み渡っていく。
かつて同じ絶望を知った彼だからこそ、その言葉には、どんな励ましよりも強い説得力があった。
「だから……もう一度だけ、お話を書いてみませんか? ……涼風先生の物語を、一番近くで支えさせてほしいんだ」
差し出された彼の掌が、私の小さな手を優しく包み込む。
「先生」と呼ばれたその響きに、止まっていた心臓が大きく跳ねた。
一人で書いていた時は、ただ怖かった。
けれど、今は、私のすべてを肯定してくれる「最初の読者」が、すぐ隣にいる。
教室の窓から差し込む夕日は、いつの間にか私たちの影を一つに重ねていた。