図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
『いいんだよね。完結のボタン……押しても』
スマートフォンの画面に浮かぶ、赤色の「完結」ボタン。
これを押せば、もう後戻りはできない。私の、私たちの全力の結晶が、荒波のようなネットの海へと放り出されることになる。
指先が微かに震え、最後の一歩が踏み出せない。
「もちろん。この最高な作品を、みんなに届けよう。大丈夫、自信を持って」
隣に座る蓮見くんが、力強く、けれど穏やかに私の背中を押してくれた。
その言葉に守られるようにして、私は目をつむり、思い切りボタンを押し込んだ。
【送信完了】
画面に表示された文字を見て、ふう、と肺の中の空気をすべて吐き出した。
「コンテストの結果は、来週発表だったね」
『……うん』
「やっぱり、不安?」
彼が覗き込むようにして、私の顔を伺う。
『うん。ずっと不安……。あんなにたくさん褒めてもらったのに、やっぱり、評価されるのが怖くて』
「…一生懸命書いたからこそ、怖いよね」
彼は無理に励ますのではなく、私の「不安」という感情をそのまま包み込むように共感してくれた。
けれど、握りしめた私の手に重ねられた彼の指からは、「何があっても俺がここにいる」という、言葉以上の力強い熱が伝わってきていた。