図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~

「ふうかちゃん。上から二番目の列、ここもちゃんと見てみて」


蓮見くんの指先が、スマートフォンの画面をトントンと叩く。
興奮で見落としていた、受賞タイトルのすぐ下に並ぶ、一際まぶしい一文。


【 優秀賞は書籍化確約となります。追ってご登録のメールアドレスに詳細を送りますので、ご確認のほど、よろしくお願いいたします 】


『う、うそ……っ』


喉の奥から、乾いた声が漏れた。

書籍化。それは私が文字を書き始めたあの日から、ずっと遠く、おぼろげに夢見ていた場所。
でもそれは所詮、私の頭の中にしかない「いつか叶えばいいな」というだけの、儚い夢で終わると思っていたのに。

今、この瞬間に。
西日に照らされた図書室の隅っこで、その夢は確かな重みを持って私の現実に溶け込んできた。


「嘘じゃないよ。……ふうかちゃんの物語が、本になるんだ。もっとたくさんの人に、君の言葉が届くんだよ」


蓮見くんの声が、涙でぐちゃぐちゃになった私の心に、誇らしげに響く。
書き続けるのが辛かった日も、スランプに泣いた夜も、すべてはこの日のためにあったのかもしれない。

震える手で画面を抱きしめる私を、彼は優しく、そしてこの上なく大切そうに、その温かい腕の中に閉じ込めた。
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