図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~
『……っ、は、い……』
喉の奥が熱く焼けるようで、肺に溜まった空気を絞り出すようにして答えるのが精一杯だった。
たった二文字。
それだけの言葉なのに、口にした瞬間に「水越ふうか」ではない、隠し通してきた自分の輪郭が、彼の前で鮮明に浮き彫りになってしまう。
俯いた視界の端で、スマホの画面が虚しく光っている。
……笑われる。絶対に。
声に出して嘲笑われ、陰キャらしい根暗な趣味だ、と吐き捨てられてしまうんだろうか。
それとも、学校一の人気者である彼が、外で待ち構える仲間の元へ行って、面白おかしく私の「秘密」を吹聴するんだろうか。
そんな最悪な想像が、濁流のように頭の中をぐるぐると駆け巡る。
指先は氷のように冷たくなり、カバンのストラップを握りしめる手には、爪が食い込むほどの力がこもっていた。
彼からの次の言葉を待つ数秒間が、まるで永遠の拷問のように長く感じられて、私はただ、絶望の中で強く目を閉じた。