暴れる恋情 ~萌ちゃんママは御曹司に激愛されまくりです~
私のあの人は、いつも閉店間際にやって来る。そろそろ閉店であることを知らせる「ホタルの光」が流れる頃、あの人は静かにレジカウンターにやって来て、文庫本を一冊買って帰る。
駅ビルの三階にあるこの『吉永書店』ではたしかに文庫部門の売れ行きが一番いい。それは多分駅という場所も関係していて、どこかへ行く時に鞄に忍ばせたいからだろうと私は思っている。
私は。二十六歳。大学を卒業してからこの吉永書店に勤めだしたのでそろそろ入社四年目となる。
書店では社員それぞれが部門別に本の販売や発注、管理を請け負っている。私は雑誌と旅行ガイド部門を入社当初は受け持っていた。様々な雑誌を扱い、売り場全体を盛り上げようと随分、陳列には気を配った。
今ではネットを主に見るので雑誌を買う人が少ないと言われている。だがそれでもめげずにちょっとした企画コーナーやミニフェアをやってはどうにか売り上げに結びつけていた。
だいぶ慣れてきたな、と思っていると去年、社員の部門替えがあった。
私は今度は文庫と文房具の受け持ちとなった。小説を読むのが大好きなので、この配置換えは大歓迎だ。
文庫の購買率は高いので、慎重な抜けのない発注が求められる。二年目の今、人気作の売り切れが出ないよう、細やかな補充をしているが人気作ともなればそう簡単に追加も入らず、そこをどう凌ぐかが今の課題だ。
自分が「これは売れる」と思った文庫にはPOPを書いた。簡潔にいかに面白いかを小さな紙に書き、その文庫に分るように取り付ける。その紙をPOPという。
私のPOPは功を奏す事が多く、自分がレジに立っているときにその文庫が売れると思わず心の中でガッツポーズをしてしまう。
忙しい毎日だがそんなやりがいがあるので充実した日々を過ごしていると言える。
そんなある日、私は遅番のシフトに入っていた。夕方から閉店までレジに入っていなくてはいけない。駅ビルにある吉永書店は、その時間帯に会社帰りの客でごったがえす。
私はひたすらレジを打つことになる。
だから、あの人が『真夜中シリーズ 秋の美術館』をレジに持ってきたときも、やはり私がレジで打つところだった。閉店間際でホタルの光が流れ、店内の客はまばらになってきていた。
あの人はレジに並ぶことなく、すっと私の前に文庫を差し出した。
私は躊躇した。
この人は先週『真夜中シリーズ春の美しい庭』を買ったのを覚えている。もし他の書店で買ったのでなければ『真夜中シリーズ 夏の海の家』を買った方がいい。シリーズの第二巻目なのだ。確かに作品はそんなに連続性はない。だが登場人物たちの成長なども物語の主軸なので、時系列で読むのが望ましい。
迷っている暇はない。レジでは迅速な対応が求められる。
私はえいっと自分をどついて口を開いた。
「お客様、失礼ですが、こちらシリーズの三巻目となりますが、二巻目じゃなくてもよろしかったでしょうか」
うつむきがちだったあの人はふ、と顔をあげる。
目があって、私はびくん、と心臓が跳ねた。
この人は一年くらい前からの常連なのだが、私は一度会っただけで彼のことを覚えてしまった。
サラサラの長めの髪の毛に、小さな顔、目と眉は均整がとれてる。すっとした品のいい鼻と薄い唇。なんというかとんでもなく美麗な人なのだ。服装はいつもキリリとしたスーツを着ている。紳士服にうとい私でもそのスーツがブランドものの高価なものであるのがわかる。
そして買っていく文庫がことごとく私が読んだ事のある作品の事が多いので、「あ、またかぶった」と毎度思うことになる。
つまりとびきり綺麗な男性でさらに本の趣味が似ている……気にならないと言ったら嘘になる。好きな本の話しをふたりでしたら、楽しそうだ。
しかし混みやすいレジで「これおもしろそうですよね」などと声をかけるのは憚られる。
だが、今日は別問題だ。
文庫の二巻を買うべきなのに、三巻目を買おうとしている。ここはちらりとアドバイスしてもいいだろう。
その人は長い睫毛をぱちぱちっとさせて私の目を見て言った。
「そうだったんですね。『秋の美術館』という題に惹かれてつい手を伸ばしてしまいました。たしかに二巻目の海の方を買った方がいいですよね」
私はさっとレジカウンターを出て文庫売り場に行き、二巻を手にして戻ってきた。
「ではこちらでよろしいでしょうか」
「はい。お願いします。ありがとう」
二巻目を他の書店で買った、とかでなくてよかった、と私は心の中で胸を撫でおろした。
すぐに会計は終わり、次のお客様の対応に追われた。
作業をこなしながら、「あんな声なんだ...」と胸の内で呟いていた。低すぎず、よく通る声だった。
実をいうと二巻目の『夏の海の家』はとてもおもしろかったのだ。さらにうっすら三巻目につながるエピソードもある。どうしても二巻、三巻と順を追って読んでほしかった。
ついおススメしちゃったけど気を悪くしてないかな......。
そんな不安もよぎる。しかし物思いに更ける余裕はなく、最後のお客様までレジを打ち続けた。
レジの締めをして売上金を店長に渡すと、私の今日の業務は終わりだった。更衣室に行って制服から私服に着替えることにする。
更衣室ではすでに私服に着替えた同僚の真奈美が化粧直しをしていた。
「深雪、お疲れ。さっきちらっと売り場から見えたんだけど、あんたさっき王子様としゃべってなかった?」
私にとってのあの人は、抜きんでて綺麗な男性なので、すぐに店内でも目立ち、女子社員から王子様とあだ名をつけられていた。
「シリーズ二巻目を買わないで三巻目を買おうとしてたからアドバイスしただけ。あっさりしたものだったよ」
「ふうん。でもそれってやっぱり王子だったから言ったんでしょ?」
「え、違うよ。私も読んだことのある本だったから順番に読んだ方がいいと思って……」
そう言いながら実は自分でもわからなかった。あの綺麗な人と話してみたかったのは事実だ。声も聞いてみたかった。実は私だって心の中では王子様と呼んでいるし。
「ふうん。深雪って男っ気ないじゃない。恋の到来じゃない?」
真奈美は恋バナが好きだ。仕事の話は真面目にするのに、恋バナになると私をからかうようなところがある。真奈美のことは好きなので苛立ったりすることはないけれど、ちょっとだけ困ってしまう。私はこれまで彼氏がいたことがない。学生時代、告白されたこともあるけれど、どう受け入れればいいのかわからず、お断りしてしまった。
それを真奈美も知っていて、からかってくるのだ。
「そうかなあ。そんなに恋は簡単に訪れないでしょ?」
カーディガンを羽織り、ロッカーの扉を閉める。
「うーん。私は一目ぼれってアリだと思ってるからなあ。来た!と思ったら好き好きってなってもうどうにかしてこの人と連絡先交換したい!ってなるけど」
真奈美は恋にアグレッシブだ。合コンをやると女豹のように男子をさらっていくらしい。恋をしたことのない私には遠い話だが、知らない世界の話し聞くのは面白い。本よりリアルな恋愛の世界だ。
「それにさ、私惹かれ合う運命っていうのも信じてるしさ」
「ふうん」
恋愛小説もときどき読むからそういう物語も読んだことはある。偶然が重なって恋が深まったり、驚くような展開があって距離が近くなったり。
「惹かれあうっていうのは...相手の気持ちもわかるってこと?」
真奈美はにやっと笑った。
「わかるよ。あ、この人私のこと好きだろうなって。もっと好きにならせてやるって臨戦態勢に入るね」
やはり女豹。奥手な私にはとてもできそうにない芸当だけれど、そんなパッションはちょっとうらやましい。
王子と呼ばれるあの人のことを考える。心から綺麗と思っている人がしゃべる様子はずっと見ていたかったし、何よりも本の話がしてみたかった。本屋勤めしていても私と同じ本の趣味の社員やバイトの人はいなかった。
私はいろんな本を読むけれど、一番好きなのは翻訳ミステリーだ。そしてあの人もまた翻訳ミステリーを買っていくことが多い。
今日買って行った『夏の海の家』も後半のどんでん返しがおもしろく、さりげない伏線にしてやられてしまった。あの人は伏線に気付くだろうか。そんな話をしてみたい。
「あ、いけない友達と約束してるんだった。深雪、お疲れ。また明日ね」
真奈美は慌てて更衣室を出て行った。
二十一時時閉店なので時計はもう二十一時半になろうとしていた。
店の入った駅ビルを出るとひゅっと冷たい風に吹かれた。三月といってもまだ寒い。でも何か......うずうずするような心の動きがあり、このままアパートの部屋に帰りたくないと思ってしまった。
カフェラテでも飲んでいこうかな。
駅ビルの向いにあるコーヒーチェーン店に入った。買ったカフェラテを口にすると喉が渇いていたことに気付く。温かい飲み物が冷えた身体に沁みわたりほっとする。
飲みながらしばらく私は文庫本を読んだ。昨日寝る前に読んで続きが気になっていたのですぐに物語に没入していった。いつの間にか三十分が経って時計が二十二時を過ぎたので帰ることにする。カフェラテは全部飲みきれなかった。でもこれ以上ここにいると寝る時間まで遅くなってしまう。私は規則正しい生活リズムを壊したくない方だ。
本をバッグにしまい、コートを着てトレイを持ち上げたところでレシートを落としてしまった。さっとかがんでそれを拾おうとした。
「あ」
低い男性の声がするのと同時になにかが私のバッグとぶつかった感じがした。はっとして振り返ると、男性がよろけたようなポーズでテーブルに手をついている。
駅ビルの三階にあるこの『吉永書店』ではたしかに文庫部門の売れ行きが一番いい。それは多分駅という場所も関係していて、どこかへ行く時に鞄に忍ばせたいからだろうと私は思っている。
私は。二十六歳。大学を卒業してからこの吉永書店に勤めだしたのでそろそろ入社四年目となる。
書店では社員それぞれが部門別に本の販売や発注、管理を請け負っている。私は雑誌と旅行ガイド部門を入社当初は受け持っていた。様々な雑誌を扱い、売り場全体を盛り上げようと随分、陳列には気を配った。
今ではネットを主に見るので雑誌を買う人が少ないと言われている。だがそれでもめげずにちょっとした企画コーナーやミニフェアをやってはどうにか売り上げに結びつけていた。
だいぶ慣れてきたな、と思っていると去年、社員の部門替えがあった。
私は今度は文庫と文房具の受け持ちとなった。小説を読むのが大好きなので、この配置換えは大歓迎だ。
文庫の購買率は高いので、慎重な抜けのない発注が求められる。二年目の今、人気作の売り切れが出ないよう、細やかな補充をしているが人気作ともなればそう簡単に追加も入らず、そこをどう凌ぐかが今の課題だ。
自分が「これは売れる」と思った文庫にはPOPを書いた。簡潔にいかに面白いかを小さな紙に書き、その文庫に分るように取り付ける。その紙をPOPという。
私のPOPは功を奏す事が多く、自分がレジに立っているときにその文庫が売れると思わず心の中でガッツポーズをしてしまう。
忙しい毎日だがそんなやりがいがあるので充実した日々を過ごしていると言える。
そんなある日、私は遅番のシフトに入っていた。夕方から閉店までレジに入っていなくてはいけない。駅ビルにある吉永書店は、その時間帯に会社帰りの客でごったがえす。
私はひたすらレジを打つことになる。
だから、あの人が『真夜中シリーズ 秋の美術館』をレジに持ってきたときも、やはり私がレジで打つところだった。閉店間際でホタルの光が流れ、店内の客はまばらになってきていた。
あの人はレジに並ぶことなく、すっと私の前に文庫を差し出した。
私は躊躇した。
この人は先週『真夜中シリーズ春の美しい庭』を買ったのを覚えている。もし他の書店で買ったのでなければ『真夜中シリーズ 夏の海の家』を買った方がいい。シリーズの第二巻目なのだ。確かに作品はそんなに連続性はない。だが登場人物たちの成長なども物語の主軸なので、時系列で読むのが望ましい。
迷っている暇はない。レジでは迅速な対応が求められる。
私はえいっと自分をどついて口を開いた。
「お客様、失礼ですが、こちらシリーズの三巻目となりますが、二巻目じゃなくてもよろしかったでしょうか」
うつむきがちだったあの人はふ、と顔をあげる。
目があって、私はびくん、と心臓が跳ねた。
この人は一年くらい前からの常連なのだが、私は一度会っただけで彼のことを覚えてしまった。
サラサラの長めの髪の毛に、小さな顔、目と眉は均整がとれてる。すっとした品のいい鼻と薄い唇。なんというかとんでもなく美麗な人なのだ。服装はいつもキリリとしたスーツを着ている。紳士服にうとい私でもそのスーツがブランドものの高価なものであるのがわかる。
そして買っていく文庫がことごとく私が読んだ事のある作品の事が多いので、「あ、またかぶった」と毎度思うことになる。
つまりとびきり綺麗な男性でさらに本の趣味が似ている……気にならないと言ったら嘘になる。好きな本の話しをふたりでしたら、楽しそうだ。
しかし混みやすいレジで「これおもしろそうですよね」などと声をかけるのは憚られる。
だが、今日は別問題だ。
文庫の二巻を買うべきなのに、三巻目を買おうとしている。ここはちらりとアドバイスしてもいいだろう。
その人は長い睫毛をぱちぱちっとさせて私の目を見て言った。
「そうだったんですね。『秋の美術館』という題に惹かれてつい手を伸ばしてしまいました。たしかに二巻目の海の方を買った方がいいですよね」
私はさっとレジカウンターを出て文庫売り場に行き、二巻を手にして戻ってきた。
「ではこちらでよろしいでしょうか」
「はい。お願いします。ありがとう」
二巻目を他の書店で買った、とかでなくてよかった、と私は心の中で胸を撫でおろした。
すぐに会計は終わり、次のお客様の対応に追われた。
作業をこなしながら、「あんな声なんだ...」と胸の内で呟いていた。低すぎず、よく通る声だった。
実をいうと二巻目の『夏の海の家』はとてもおもしろかったのだ。さらにうっすら三巻目につながるエピソードもある。どうしても二巻、三巻と順を追って読んでほしかった。
ついおススメしちゃったけど気を悪くしてないかな......。
そんな不安もよぎる。しかし物思いに更ける余裕はなく、最後のお客様までレジを打ち続けた。
レジの締めをして売上金を店長に渡すと、私の今日の業務は終わりだった。更衣室に行って制服から私服に着替えることにする。
更衣室ではすでに私服に着替えた同僚の真奈美が化粧直しをしていた。
「深雪、お疲れ。さっきちらっと売り場から見えたんだけど、あんたさっき王子様としゃべってなかった?」
私にとってのあの人は、抜きんでて綺麗な男性なので、すぐに店内でも目立ち、女子社員から王子様とあだ名をつけられていた。
「シリーズ二巻目を買わないで三巻目を買おうとしてたからアドバイスしただけ。あっさりしたものだったよ」
「ふうん。でもそれってやっぱり王子だったから言ったんでしょ?」
「え、違うよ。私も読んだことのある本だったから順番に読んだ方がいいと思って……」
そう言いながら実は自分でもわからなかった。あの綺麗な人と話してみたかったのは事実だ。声も聞いてみたかった。実は私だって心の中では王子様と呼んでいるし。
「ふうん。深雪って男っ気ないじゃない。恋の到来じゃない?」
真奈美は恋バナが好きだ。仕事の話は真面目にするのに、恋バナになると私をからかうようなところがある。真奈美のことは好きなので苛立ったりすることはないけれど、ちょっとだけ困ってしまう。私はこれまで彼氏がいたことがない。学生時代、告白されたこともあるけれど、どう受け入れればいいのかわからず、お断りしてしまった。
それを真奈美も知っていて、からかってくるのだ。
「そうかなあ。そんなに恋は簡単に訪れないでしょ?」
カーディガンを羽織り、ロッカーの扉を閉める。
「うーん。私は一目ぼれってアリだと思ってるからなあ。来た!と思ったら好き好きってなってもうどうにかしてこの人と連絡先交換したい!ってなるけど」
真奈美は恋にアグレッシブだ。合コンをやると女豹のように男子をさらっていくらしい。恋をしたことのない私には遠い話だが、知らない世界の話し聞くのは面白い。本よりリアルな恋愛の世界だ。
「それにさ、私惹かれ合う運命っていうのも信じてるしさ」
「ふうん」
恋愛小説もときどき読むからそういう物語も読んだことはある。偶然が重なって恋が深まったり、驚くような展開があって距離が近くなったり。
「惹かれあうっていうのは...相手の気持ちもわかるってこと?」
真奈美はにやっと笑った。
「わかるよ。あ、この人私のこと好きだろうなって。もっと好きにならせてやるって臨戦態勢に入るね」
やはり女豹。奥手な私にはとてもできそうにない芸当だけれど、そんなパッションはちょっとうらやましい。
王子と呼ばれるあの人のことを考える。心から綺麗と思っている人がしゃべる様子はずっと見ていたかったし、何よりも本の話がしてみたかった。本屋勤めしていても私と同じ本の趣味の社員やバイトの人はいなかった。
私はいろんな本を読むけれど、一番好きなのは翻訳ミステリーだ。そしてあの人もまた翻訳ミステリーを買っていくことが多い。
今日買って行った『夏の海の家』も後半のどんでん返しがおもしろく、さりげない伏線にしてやられてしまった。あの人は伏線に気付くだろうか。そんな話をしてみたい。
「あ、いけない友達と約束してるんだった。深雪、お疲れ。また明日ね」
真奈美は慌てて更衣室を出て行った。
二十一時時閉店なので時計はもう二十一時半になろうとしていた。
店の入った駅ビルを出るとひゅっと冷たい風に吹かれた。三月といってもまだ寒い。でも何か......うずうずするような心の動きがあり、このままアパートの部屋に帰りたくないと思ってしまった。
カフェラテでも飲んでいこうかな。
駅ビルの向いにあるコーヒーチェーン店に入った。買ったカフェラテを口にすると喉が渇いていたことに気付く。温かい飲み物が冷えた身体に沁みわたりほっとする。
飲みながらしばらく私は文庫本を読んだ。昨日寝る前に読んで続きが気になっていたのですぐに物語に没入していった。いつの間にか三十分が経って時計が二十二時を過ぎたので帰ることにする。カフェラテは全部飲みきれなかった。でもこれ以上ここにいると寝る時間まで遅くなってしまう。私は規則正しい生活リズムを壊したくない方だ。
本をバッグにしまい、コートを着てトレイを持ち上げたところでレシートを落としてしまった。さっとかがんでそれを拾おうとした。
「あ」
低い男性の声がするのと同時になにかが私のバッグとぶつかった感じがした。はっとして振り返ると、男性がよろけたようなポーズでテーブルに手をついている。
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