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「それは……」

「ああ。リゼルを、可愛がってはいるだろう。幼い頃から長い間一緒にいるのだから、情はあるはずだ。けれど、それとこれとは別の話なんだ」

「お兄様」

 聞きたくはなかった。そんな話。

 まるで、胸の中が鋭いナイフでズタズタに引き裂かれるような、そんな残酷な話は。

 二人の間にある身分差なんて気にすることはないと、信じられる純粋な子どものままで居たかった。

「いつまで、幼い頃の戯言を信じている。あいつは相手を選べる側の人気者なんだ。いい加減に目を覚ませ」

 今思うと、兄スチュワートは幼い頃からエドワードに対し親しく接しながらも、どこかで線を引いていたように思う。

 それは、将来公爵と男爵となる自分たち二人の間にある避けがたい身分差を幼いながらに感じ取り、適切に距離を取って、エドワードと付き合っていたということではないだろうか。

 幼い頃にした他愛もない口約束を馬鹿みたいに信じていた私とは、全く違う。

 兄が口にした厳しい言葉は、もっともで真実に近いのだろう。

 けれど、それは今まで貴族令嬢として努力すべき何もかもから逃げ続けていた私の心を打ちのめした。

 幼い頃の小さな約束だけを信じて、エドワードと結婚するのだと一人で夢見て、そう思い込んでいようと自分を甘やかしていたことに、ようやく気がついたのだ。




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