妹を監禁するはずの悪役から、なぜか溺愛執着されています
 あきらめて深いため息をつく私の前で、ジェラールの顔が明るくなる。

「ありがとう、リゼット嬢」

 私の手を取り、感謝の言葉を口にした時、横からエディアルドが現れ、その手をパッとつかんだ。

「黙れ、リゼットから離れろ」

 初めて聞く怒りを含んだ声に体が震えた。しかも――。男性と思うほど低かった。
 ジェラールも気づいたようで、ハッと顔をこわばらせた。

「リゼット、喉がかわいただろう? 紅茶を準備しよう」

 だがすぐにいつもの調子に戻ったエディアルドにホッとする。エディアルドはジェラールにチラッと視線をなげた。

「邪魔。リゼットとお茶をするから、出て行って」
「……」

 ジェラールは無言でスッと立ち上がり、膝についたゴミを手で払った。

「しばらく、俺もカーライル家で過ごさせてもらう」
「はっ?」

 エディアルドは心底嫌そうに顔をゆがめる。

「君がなにかしでかさないか見張っていると、カーライル公爵と約束しているし。それにリゼット嬢、なにかあったら相談してくれ。力になれるかもしれない」

 よく言うわ、結局はエディアルドが一番で、私を帰すことができないくせに!

 その後は、ジェラールはエディアルドに背中を押され、部屋から追い出されていた。

「うるさいのに、見つかったな」

 エディアルドは面倒だといわんばかりに、ぽつりとつぶやいた。

 ***

「リゼット、これもいいんじゃない?」

 翌日の朝、ネグリジェ姿のエディアルドが出してきたのは白地の裾に刺繍の入ったワンピース。上質で軽やかな素材で着心地が良さそうだ。

「こっちもリゼットに似合いそうだけど」

 もう一つは薄いブルーの色あいで胸元に大きなリボンがついているワンピース。
 滞在中、エディアルドが服を貸してくれるというのだが、なぜか着せ替え人形になっていた。

 洋服をたくさん持っているエディアルドのクローゼットを見せてもらったが、びっしりと詰まっている。彼は一度袖を通したら、同じものは着用しないそうだ。なんたる財力。

「ねえ、じゃあ、双子コーデしない?」
「なにそれ?」
「同じような服を私とお揃いで着るの。髪型もそろえて」

 提案するとエディアルドの顔が輝いた。二人で白いブラウスと青地にレースの入ったスカートを選ぶ。胸元を飾るリボンは色違い。髪型もそこにつけるリボンも指定した。

 それぞれが服を持ち、着替え終わると部屋に集合する約束をした。
 やがて、着替え終えたエディアルドが部屋に入ってくる。

「リゼット、可愛い~~!!」

 私を一目見ると手を叩き、顔を輝かせて褒めてくれた。

「そ、そうかな」
「うん、すっごく可愛いよ! 似合っている!」

 エディアルドこそ、とんでもない美少女だというのに。クスクスと笑っていると、ジェラールが顔を出す。

「ほら、ジェラール。双子コーデというやつらしい」

 得意げになってジェラールに見せつけた。

「ああ、似合っているよ」

 私に視線を向けて優しく微笑むものだから、ドキッとしてしまう。エディアルドは腕を組み、口を尖らせた。

「やっぱ、いい。ジェラールはリゼットを見ないで」

 ジェラールはまたもや背中を押され、部屋から強制的に退出させられた。

「リゼット、どこへ行く?」

 私の手を握るエディアルドは顔をのぞき込む。その手の温かさにドキッとしてしまう。

「庭園をお散歩しましょうか」

 私たちは花の香りを堪能しながら、散歩をする。エディアルドは腕を絡ませ、私に寄りかかる。

「ジェラールにこんなに早く見つかったのは失敗だったな。いっそ、北の別荘に今から移動するか? いや、それじゃあ、寒いからリゼットが風邪をひく」

 ぶつぶつとつぶやくエディアルドに、たまらず質問してみる。

「私を家に帰してくれるんだよね……?」

 数日遊べば納得して帰してくれる約束だったもの。エディアルドはスッと無表情になり、私を見つめる。

「うん。――でもまだダメ」

 返答を聞き焦りが出るが、表情に出さないようにグッと務めた。
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