妹を監禁するはずの悪役から、なぜか溺愛執着されています
暗闇の中、私は歩いていた。
道なんてない。だけど、ずっと前だけを見て歩き続けなければいけない。
なぜか、そんな気がした。
焦りからかいつの間にか走りだしていた。
自身の吐く息遣いだけが暗闇に響く恐怖に、私は怯えていた。
逃げなきゃ。追いつかれてしまう。
でも、誰に――?
不意に目の前が、光に包まれ明るくなる。
そこに現れたのは、一人の女性だった。
暗闇の中、燦々と輝く陽光のような金色の髪が、風に揺れてまばゆい光を放つ。
そして、その瞳――澄みきった碧の輝きは、彼女がひとたび視線を向ければ、吸い込まれそうな深みがそこにあった。
これほどの美しい女性を私は見たことがない。まるで女神のような輝かしさを持つ女性は、私に向かってにっこりと微笑む。
暗闇に歩き疲れていた私は、フラフラと女性に近づいた。まるで闇が光に焦がれるように。
そう、光に近づければ、私自身も救われ、癒されるような気がしたのだ。
女性は両手をスッと私に差し出した。その動きには一切の迷いがなく、ただ静かな気品が漂っている。
まるでなにかを渡すような仕草に、身を乗り出した。すると女性の手の中がいきなり輝き始めた。
そのまぶしさに目がくらみ、顔を両手で覆った――。
***
ハッとして瞼を開ける。
今のは夢? やけにリアルで目覚めれば汗びっしょりになっていた。
身を起こして周囲を見ると、部屋の風景が広がる。暗闇ではないことに安堵して胸をなで下ろす。
やっぱり夢か。夢で良かった。
やけに生々しくて、短時間だったのに、すごく疲れてしまった。それに目覚めたら、体が重苦しい気がする。
そっと額に手を当てると、なんだか熱いのは気のせいじゃないはずだ。
まいったな、風邪でもひいたのかしら。こんなところでうたた寝なんてするからかな。
それとも悩みすぎたせいかしら?
考えている間も、どんどん熱が上がってきたような気がする。
ソファから立ち上がると、フラフラとよろめきながらベッドへと向かう。
少し横になろうと思い、そのまま目を閉じた。
***
結局、私は三日間、高熱を出して寝込んだ。
朝は健康そのものだったのに、珍しいことだと両親も首をひねった。
喉の痛みや鼻水が出るとかは一切なく、熱以外の症状はなにもなかった。最初は風邪だと思っていたので、私も不思議だった。
そして寝込むこと、四日目。
突然、頭がすっきりとした感じでパチリと目が覚めた。
なんだろう、たくさん眠ったからだろうか。すごく頭の中がクリアだ。
いつもと違うなにかを感じる。手をギュッと握ってみるが、体の底から湧き上がる温かい力を感じる。
まぁ、気のせいだと思いつつも、不意に両手に力を込めてみる。
すると一瞬、部屋がまばゆい光に包まれた。
「うわっ!?」
驚いて跳ね起き、自身の両手をまじまじと見つめた。
深く息を吸い込み、再度両手に集中すると、再び輝きだした。
「これは――光の加護……」
言葉にすると自身の胸の奥深くで、カチリとパズルのピースのはまるような感覚があった。
うそ……。どうして私が精霊の加護を使えるようになったの?
普通、魔力の源である精霊の加護持ちは生まれつきだ。のちに精霊の加護がつく者も、ごく稀にいると聞く。あとは、精霊の加護持ちから加護を引き継ぐ場合――。
どれも話に聞いたことがあるぐらいで、実際に見たことがないので、定かでない。だが、圧倒的に多いのは持って生まれるパターンだと聞く。そして一族に加護持ちがいると、子も加護持ちになる、いわゆる遺伝の場合が多いと聞く。
グリフ家に加護持ちは、私の知る限りはいない。
いったい、どうして――。
だが、勘違いじゃない。私の中の本能が光の加護を受けたと実感している。
もしかして、小説の中に転生した私へのラッキーボーナスじゃない? 神様とやらの。
これからエディアルドに対峙するにあたって、上手く逃げ切れるように、特殊能力を授けてくださったよ。
そう考えれば夢に出てきた美しい女性は、本当に女神様だったのかも!
三日間の発熱は、もしかしたら体が加護の力に馴染む前の知恵熱だったのかもしれない。
ありがとう、私とシアナを救ってくれることになるかもしれない女神様よ!!
この力を手に、運命を回避してみせるわ!
その日のうちに家族に報告した。最初は半信半疑だったが、実際に目の前で力を使ってみせると、すごく驚かれ、腰を抜かすかと思った。すぐに精霊鑑定士が自宅に呼ばれ、無事に精霊の加護持ちと判定された。そしてやはり、光属性だったそうだ。
結果を聞き、うちの家族は大賑わい。なぜなら、グリフ家では初の精霊の加護持ちだったから。お祝いで家族だけでささやかなパーティを開催してくれた。
「うちの一族から精霊の加護持ちが現れるなんて、信じられない快挙だ!」
「本当にすごいわ、リゼット!」
「お姉さま、おめでとう。姉妹として鼻が高いわ」
豪華な料理を囲んでの席で、口々に褒められて照れくさい。
「ありがとう。私がこの力を手に入れたのも、なにか意味があると思うの。だから、皆のために使うわ」
決意を込め、家族の顔をじっくりと見回して伝える。
「はは、リゼットは頼もしい。しっかり者のリゼットがいればグリフ家は安泰だな」
父は上機嫌でワイングラスを掲げている。
そう、私の手で安泰にするのだ。どうやってもエディアルドの手から逃げ延びて、救ってみせる。
「はい、お父さま。お任せください」
にっこり微笑む私を、家族全員が誇らしげな顔で見ていた。
道なんてない。だけど、ずっと前だけを見て歩き続けなければいけない。
なぜか、そんな気がした。
焦りからかいつの間にか走りだしていた。
自身の吐く息遣いだけが暗闇に響く恐怖に、私は怯えていた。
逃げなきゃ。追いつかれてしまう。
でも、誰に――?
不意に目の前が、光に包まれ明るくなる。
そこに現れたのは、一人の女性だった。
暗闇の中、燦々と輝く陽光のような金色の髪が、風に揺れてまばゆい光を放つ。
そして、その瞳――澄みきった碧の輝きは、彼女がひとたび視線を向ければ、吸い込まれそうな深みがそこにあった。
これほどの美しい女性を私は見たことがない。まるで女神のような輝かしさを持つ女性は、私に向かってにっこりと微笑む。
暗闇に歩き疲れていた私は、フラフラと女性に近づいた。まるで闇が光に焦がれるように。
そう、光に近づければ、私自身も救われ、癒されるような気がしたのだ。
女性は両手をスッと私に差し出した。その動きには一切の迷いがなく、ただ静かな気品が漂っている。
まるでなにかを渡すような仕草に、身を乗り出した。すると女性の手の中がいきなり輝き始めた。
そのまぶしさに目がくらみ、顔を両手で覆った――。
***
ハッとして瞼を開ける。
今のは夢? やけにリアルで目覚めれば汗びっしょりになっていた。
身を起こして周囲を見ると、部屋の風景が広がる。暗闇ではないことに安堵して胸をなで下ろす。
やっぱり夢か。夢で良かった。
やけに生々しくて、短時間だったのに、すごく疲れてしまった。それに目覚めたら、体が重苦しい気がする。
そっと額に手を当てると、なんだか熱いのは気のせいじゃないはずだ。
まいったな、風邪でもひいたのかしら。こんなところでうたた寝なんてするからかな。
それとも悩みすぎたせいかしら?
考えている間も、どんどん熱が上がってきたような気がする。
ソファから立ち上がると、フラフラとよろめきながらベッドへと向かう。
少し横になろうと思い、そのまま目を閉じた。
***
結局、私は三日間、高熱を出して寝込んだ。
朝は健康そのものだったのに、珍しいことだと両親も首をひねった。
喉の痛みや鼻水が出るとかは一切なく、熱以外の症状はなにもなかった。最初は風邪だと思っていたので、私も不思議だった。
そして寝込むこと、四日目。
突然、頭がすっきりとした感じでパチリと目が覚めた。
なんだろう、たくさん眠ったからだろうか。すごく頭の中がクリアだ。
いつもと違うなにかを感じる。手をギュッと握ってみるが、体の底から湧き上がる温かい力を感じる。
まぁ、気のせいだと思いつつも、不意に両手に力を込めてみる。
すると一瞬、部屋がまばゆい光に包まれた。
「うわっ!?」
驚いて跳ね起き、自身の両手をまじまじと見つめた。
深く息を吸い込み、再度両手に集中すると、再び輝きだした。
「これは――光の加護……」
言葉にすると自身の胸の奥深くで、カチリとパズルのピースのはまるような感覚があった。
うそ……。どうして私が精霊の加護を使えるようになったの?
普通、魔力の源である精霊の加護持ちは生まれつきだ。のちに精霊の加護がつく者も、ごく稀にいると聞く。あとは、精霊の加護持ちから加護を引き継ぐ場合――。
どれも話に聞いたことがあるぐらいで、実際に見たことがないので、定かでない。だが、圧倒的に多いのは持って生まれるパターンだと聞く。そして一族に加護持ちがいると、子も加護持ちになる、いわゆる遺伝の場合が多いと聞く。
グリフ家に加護持ちは、私の知る限りはいない。
いったい、どうして――。
だが、勘違いじゃない。私の中の本能が光の加護を受けたと実感している。
もしかして、小説の中に転生した私へのラッキーボーナスじゃない? 神様とやらの。
これからエディアルドに対峙するにあたって、上手く逃げ切れるように、特殊能力を授けてくださったよ。
そう考えれば夢に出てきた美しい女性は、本当に女神様だったのかも!
三日間の発熱は、もしかしたら体が加護の力に馴染む前の知恵熱だったのかもしれない。
ありがとう、私とシアナを救ってくれることになるかもしれない女神様よ!!
この力を手に、運命を回避してみせるわ!
その日のうちに家族に報告した。最初は半信半疑だったが、実際に目の前で力を使ってみせると、すごく驚かれ、腰を抜かすかと思った。すぐに精霊鑑定士が自宅に呼ばれ、無事に精霊の加護持ちと判定された。そしてやはり、光属性だったそうだ。
結果を聞き、うちの家族は大賑わい。なぜなら、グリフ家では初の精霊の加護持ちだったから。お祝いで家族だけでささやかなパーティを開催してくれた。
「うちの一族から精霊の加護持ちが現れるなんて、信じられない快挙だ!」
「本当にすごいわ、リゼット!」
「お姉さま、おめでとう。姉妹として鼻が高いわ」
豪華な料理を囲んでの席で、口々に褒められて照れくさい。
「ありがとう。私がこの力を手に入れたのも、なにか意味があると思うの。だから、皆のために使うわ」
決意を込め、家族の顔をじっくりと見回して伝える。
「はは、リゼットは頼もしい。しっかり者のリゼットがいればグリフ家は安泰だな」
父は上機嫌でワイングラスを掲げている。
そう、私の手で安泰にするのだ。どうやってもエディアルドの手から逃げ延びて、救ってみせる。
「はい、お父さま。お任せください」
にっこり微笑む私を、家族全員が誇らしげな顔で見ていた。