妹を監禁するはずの悪役から、なぜか溺愛執着されています
 それから私は精霊の加護について本を読み漁った。同じく精霊の加護持ちの家庭教師をつけてもらい、光属性について学んだ。せっかくの精霊の加護も、使いこなせなければ意味がない。

 光属性は主に回復の力が強く、魔法治療師などの職業に就くことが多いそうだ。
 あと、光属性が作る薬は効果が倍増するので、薬草士に就くことも。

 ということは、私がこの先、力を高めていけば回復力が強くなり、シアナの病気も治療できるんじゃないかしら?

 これだわ!

 シアナには健康になってもらいたい。万が一エディアルドに会ってしまい、薬のことで付け込まれても、健康だったら、そんな心配ないもんね!

 よし、やるわ。私、この力を使いこなしてみせるから!

 ***

 そして一か月後、私は両親とシアナを呼び出した。

「お話があります」

 神妙な顔持ちで切り出す私を、両親は不思議そうな顔で見つめる。

「私はシアナを連れて、ウィークスの別荘でしばらく休養しようと思います」
「なぜだい? それはここではできないことか?」

 突然の申し出に両親は焦ったみたいだ。いいわ、こんな時のために準備していた返答をすらすらと淀みなく答える。

「まず、ここの王都よりもウィークスの別荘は自然が多く、空気が澄んでいます。それはシアナの体調にはとてもいい効果があるでしょう。それにウィークスは珍しい薬草が比較的手に入ると聞きます。私が採取し、煎じて薬にすれば、その効果は倍増するでしょう。実際に精霊の力を使うので、私の勉強にもなりますし、シアナの体調も回復に向かうはずです」

 我ながら完璧な答えだわ……!

 両親も、反対する理由などないって顔をしている。
 そうして私はシアナと二人、ウィークスの別荘行きを決めたのだった。

 ***

 二週間後、私とシアナは馬車に揺られ、ウィークスの別荘を目指す。

「残念だわ。お父さまとお母さまも来られたら良かったのに」
「仕方ないわよ、お父さまもお仕事だってあるし、お母さまだけ連れてきたら、お父さまがさびしがるわよ」
「それもそうね」

 シアナは肩を上げ、声を出して笑う。

「でも、お姉さまと一緒で嬉しいわ。私のために、ありがとう」
「ううん。いいのよ。完璧に治して、王都に戻りましょうね」

 膝の上で組んでいたシアナの手を取り、ギュッと握りしめる。シアナは嬉しそうに微笑む。

 ……間に合った。

 出発を決めたのシアナの療養もあるが、もう一つ、理由がある。
 それは小説の中では、そろそろエディアルドが動き出す頃だった。
 屋敷に閉じこもりに飽きて、舞踏会に出席するようになるので、鉢合わせを避けたいからだ。

 でもウィークスの別荘だったら大丈夫だ。エディアルドは王都にいるはずだから。

 ここで出会ってしまったら、すべての計画が無駄になる。精霊の加護を手に入れた意味だってなくなる。
 五大属性の精霊の加護持ちになんて、適うわけがない。真っ向勝負を挑んだら、返り討ちにあうだろう。

 そうならないためにも、このまま彼と対面することなく、シアナを守り抜きたい。
 妹を守ること、それがすなわち私の命が繋がることも意味するのだから。

 幼い頃に数回来たことがあるウィークスの別荘は、周囲が森に囲まれている。自然が身近に感じられ、とてもいい場所だ。

「う~ん、空気が澄んでいて、気持ちがいいわね」

 長時間馬車に揺られていたので、降りてすぐに背筋を伸ばした。

「本当、天気もいいし、素敵なところだわ」

 空では鳥たちが羽ばたき、木々の間からは木漏れ日が漏れている。
 ウィークスの別荘から少し離れたところに街もあるので、シアナの体調のいい時など、遊びに行ってもいいかも。在中している使用人が出迎えに来たので、荷物をお願いした。

「私、ここで元気になって帰れるかな」
「なれるわよ」

 明るい未来を信じ、別荘に入った。

* * *

 翌日、朝食を取るため、階下に向かう。

「おはよう、シアナ」
「おはよう、お姉さま」

 今朝のシアナの顔色は悪くない。こうやって毎日顔色を確認するのが、日課になってしまった。

「今日はちょっと街に行ってくるわ。薬草作りに必要な材料を入手してくる」

 それに街がどんなところか、偵察も兼ねている。いつか私もここでの暮らしに慣れたら、シアナを案内したい。

「行ってらっしゃい。私は本でも読んでいるわ」

 シアナに別れを告げ、さっそく街へと向かった。
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