20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす

14 セナの配信

 十一月三日月曜日。今日は祝日で私はお仕事、休みだ。
 私は九時から始まるセナの生配信を聞こうと、テレビの前で待機していた。
 セナはどこにも所属していない個人勢Vチューバーらしい。
 仲介している会社があるらしく、そこでグッズの展開をしていた。
 アクリルスタンドにキーホルダー、缶バッチまである。それにおはようとか、シュチュエーションボイスっていうのも販売していて、それはVチューバーにとって大きな収入源になっているそうだ。
 さすがにボイスの購入はしなかったけれど、グッズの顔を見ていると、どんどん赤月君と重なって見えてきてしまう。
 カフェオレとハムとチーズをのせたパンをテーブルに用意して、座椅子に座って私は生配信が始まるのを待った。
 しばらくして、画面にあの、緑色の髪の青年のアバターが現れる。
 それに着物の羽織みたいな白地に緑の模様が入った服を着ている。これって和モダン、ってやつだろう。
 
『おはようございます、今日は十一月三日、文化の日。祝日ですねー』

 そうセナが喋ると、すごい勢いで画面にコメントが流れてくる。
 溢れるおはようの文字。
 中には色が違うコメントもある。あれがスーパーチャットってやつかな。

『スーパーチャット、リリーさん、ありがとうございます。あ、ウシヤマさんもありがとうございます』

 どんどんコメントが流れてきて、セナはたまにそのコメントを拾いながら喋っていく。
 内容は最近のニュースや、今作っているプラモの事が中心だった。

『この間のシュリエッタのプラモね、もう一個買って今カスタマイズどうしようかなって思っているところだよ。どんなデザインにしようかなって』

 そう喋っている間に、どんどんコメントが流れていて、千人近い人が視聴しているのがわかる。
 その声を聞きながら、私はうーん、と呻る。
 やっぱり赤月君に似ているような……
 他の動画をチェックしてみたけど、プライベートな話、あまりしないみたいで決定打がない。
 調べてみたら、セナは宝石をテーマにしたプラモのカスタマイズをしているらしい。
 セナは緑がテーマカラーなのに、プラモは緑にカスタマイズしているもの、ないようだった。
 不自然なほどに避けているっていうか。
 実際、コメントに、エメラルドとか翡翠、ペリドットといった緑色の宝石の名前が並ぶ。
 それをセナは笑って流す。

『あはは、やっぱりエメラルドとか翡翠って皆言うよねー。僕にとって緑色は特別だから、違う色にしたいんだよね。うーん、何がいいかなー』

 すると違う色の宝石の名前をあげたコメントが並ぶけど、そのなかになんで緑が特別なの? という質問がちらほら流れていく。
 けれどセナはそのコメントを拾わず、皆が上げている宝石の名前を読み上げていく。

『ピンクトルマリン、アクアマリン、アズライト、ファイアオパール……へえ、僕が知らない宝石まだたくさんあるんだなぁ』

 そう、感心したようにセナが言う。
 宝石にこだわってるの、何でだろう。
 そう思っていると、同じ疑問を抱いた人たちはたくさんいたみたいで、宝石に関する質問がどんどん流れていく。

『宝石が好きなのかって? うーん、そうだねぇ。宝石ってすごいって思うんだ。石って僕たちが生まれるはるか昔から長い時間をかけて結晶化してあんなふうに色を帯びて輝くのって奇跡みたいだなって。だから僕は、その奇跡をプラモに再現したいなって思うんだよね』

 その答えに、かっこいい、というコメントが溢れる。
 宝石がどうやってできるかなんて考えたことなかったけれど、結晶なんだっけ。中学で少しやったような気がする。
 私の名前がヒスイだから、翡翠のアクセサリーはいくつか持ってるけど、そんな風に見たことなかったな。
 雑談中心のその配信は、きっかり十時で終わった。
 私はテレビのリモコンを手に取って、いつも見ているつばき坂二十六の公式チャンネルを開く。
 赤月君がVチューバー?
 なんかイメーが繋がらない。
 今度会った時にセナ=ジェイドのこと、話してみようかな。その様子みて、考えてみよう。
 
 
 
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