20年越しのごめんだけじゃ物足りない~幼なじみの執愛が溢れだす
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十一月四日火曜日。
平日の日中は土日の喧騒が嘘のように感じるほど穏やかだ。
商品の入荷もなく、言ってしまえば暇な時間。
お昼を食べたあとの一時過ぎ、私はガチャガチャコーナーのところにあるレジに立ち、ラッピング用紙を折って袋を作っていた。
このフロアにはセルフのラッピングコーナーがあって、ラッピング用紙やリボンが置かれている。
でも皆がラッピングできるわけではないから、楽にラッピングできるようにと、ラッピング用紙で紙袋を作って置いている。
こんな作業、前の売り場では考えられない。
そもそもレジスタッフはレジしかしてはいけなかったし、もっと殺伐とした空気が流れていた。
でもここ、エンタメフロアは社員だろうがパートだろうが関係なく何でもやる。
レジ、接客案内、予約対応、品出し、電話取次。
絶対すること多いでしょここ。
バイトも皆、同じことしてるし驚くことが多すぎる。
この袋の作り方を教えてくれたのもバイトさんだった。
私がラッピング用紙を折っていると、女性から声がかかった。
「すみませーん、ガチャガチャ出てこないんですけど」
「は、はい。少々お待ちください」
私は鍵を持って、お客さんのところに向かう。
鍵をあけて、異常がないか確認するけど、よくわからない。
とりあえず詰まっていたお金を数えて渡し、もとに戻してもう一度、お金を入れてもらう。
今度はちゃんとお金が入って、ダイヤルがガチャガチャと音をたてて回る。
でてきたカプセルを手にしたその女性は、私の方を見て、
「ありがとうございます」
と、笑顔で言った。
ありがとう、と言われるのは心地良い。
レジに戻る途中、今度は男性から声がかかる。
「すみません、商品のことで伺いたいんですが」
振り返ると、四十代と思われる、カゴを手に下げた男性がこちらの様子を伺うように立っていた。
無地のパーカーにジーパンを着た、普通っぽい感じのこぎれいな男性だ。
なんだろう。
私は笑顔を作り、
「はい、何でしょう?」
と答える。
そのお客さんは、塗料があるコーナーの方へと顔を向けて言った。
「あのー、ガイアの大きいうすめ液、今ないんですけどいつ入るかってわかりますか?」
ガイア、うすめ液。
内心焦りつつ、私は男性の持つカゴを見る。
するとそこには塗料がたくさん入っていた。
「えーと、塗料関係ってことですか?」
たしかガイアノーツがどうのって赤月君が言っていたし、売り場周ったとき、ガイアカラーていう塗料ややたら大きい液体の商品、あったっけ。
男性客は、こちらを見ると頷き答えた。
「そうですそうです。今全然なくて」
それを聞いて、私は鬼頭さんや他のスタッフから教わった言葉を口にする。
「すみません、入荷は未定になります」
これは魔法の言葉。
おもちゃもゲームもプラモも全部、いつ入るか聞かれたらこう答えるように、と教わった。
実際、いつなにが入荷するか本当にわからないらしいから嘘はない。
そんな私の答えに、男性は、そうですか、と残念そうに呟く。
「申し訳ございません」
と、頭を下げてレジに戻ろうとすると、再び声をかけられた。
「あの、すみません、注文とかってできますか?」
私は振り返り、再び頭を下げる。
「申し訳ございません、注文は承ってないです」
そう答えるとさらにそのお客さんは残念そうな顔になる。
鬼頭さんからは、塗料とかは注文うけないで、と言われたからそれでいいんだろうけれど、お客さんの残念そうな顔をみると少し心が痛む。
これが黒物家電ならレジで発注してとかできることがあるのに、おもちゃはそう簡単にはいかないらしい。
うーん、もどかしい。
そのお客さんは、私の胸元の名札をちらっと見て言った。
「珍しい名字ですね」
「あ、あぁ、よくいわれます」
名札に書かれた「せんごく」の文字。
確かに仙石って名字は珍しい。親族以外で見たことがないし、レジにいるとたまに言われる。
お客さんは私の顔を見て首を傾げて言った。
「あの……店員さん、今まで見たことないですけど最近ここにきたんですか?」
ずいぶんと話しかけてくる人だな、と思いつつ、私は笑顔を張り付けて答える。
「そうですね。先月からこちらに配属されました」
「女性の社員さん、珍しいから……」
そう言いながらそのお客さんは私の名札と顔を交互に見る。
その様子が何かこう、嫌な感じがして寒気が走る。
なんだろう、この感じ。
それでも私は愛想笑いを張り付けて答えた。
「そうなんですか?」
「俺、ここができた二十年前から通ってますけど、あんまり見たことないですね。あと、人の入れ替わり激しいし、すぐいなくなるし」
そうお客さんは早口でまくしたてる。
そ、そ、そこまで……?
まあ私がここに異動になった理由が、社員がひとりしかいなくて、誰に声かけても断られたから、だったけど。
そういえばなんで皆、異動嫌がったんだろう。微妙に田舎だからかな。
鬼頭さんに聞いたら教えてくれるだろうか。
私が微妙な顔になったのに気がついたのか、お客さんはブンブンと首を横に振る。
「す、すみません、変なこと言って。あ、ありがとうございました」
と、慌てた様子で頭を下げて去っていく。
なんだか変なお客さんだったな。
その背中を見送り、
「私、ここでやっていけるのかな……」
と、思わず呟いた。
平日の日中は土日の喧騒が嘘のように感じるほど穏やかだ。
商品の入荷もなく、言ってしまえば暇な時間。
お昼を食べたあとの一時過ぎ、私はガチャガチャコーナーのところにあるレジに立ち、ラッピング用紙を折って袋を作っていた。
このフロアにはセルフのラッピングコーナーがあって、ラッピング用紙やリボンが置かれている。
でも皆がラッピングできるわけではないから、楽にラッピングできるようにと、ラッピング用紙で紙袋を作って置いている。
こんな作業、前の売り場では考えられない。
そもそもレジスタッフはレジしかしてはいけなかったし、もっと殺伐とした空気が流れていた。
でもここ、エンタメフロアは社員だろうがパートだろうが関係なく何でもやる。
レジ、接客案内、予約対応、品出し、電話取次。
絶対すること多いでしょここ。
バイトも皆、同じことしてるし驚くことが多すぎる。
この袋の作り方を教えてくれたのもバイトさんだった。
私がラッピング用紙を折っていると、女性から声がかかった。
「すみませーん、ガチャガチャ出てこないんですけど」
「は、はい。少々お待ちください」
私は鍵を持って、お客さんのところに向かう。
鍵をあけて、異常がないか確認するけど、よくわからない。
とりあえず詰まっていたお金を数えて渡し、もとに戻してもう一度、お金を入れてもらう。
今度はちゃんとお金が入って、ダイヤルがガチャガチャと音をたてて回る。
でてきたカプセルを手にしたその女性は、私の方を見て、
「ありがとうございます」
と、笑顔で言った。
ありがとう、と言われるのは心地良い。
レジに戻る途中、今度は男性から声がかかる。
「すみません、商品のことで伺いたいんですが」
振り返ると、四十代と思われる、カゴを手に下げた男性がこちらの様子を伺うように立っていた。
無地のパーカーにジーパンを着た、普通っぽい感じのこぎれいな男性だ。
なんだろう。
私は笑顔を作り、
「はい、何でしょう?」
と答える。
そのお客さんは、塗料があるコーナーの方へと顔を向けて言った。
「あのー、ガイアの大きいうすめ液、今ないんですけどいつ入るかってわかりますか?」
ガイア、うすめ液。
内心焦りつつ、私は男性の持つカゴを見る。
するとそこには塗料がたくさん入っていた。
「えーと、塗料関係ってことですか?」
たしかガイアノーツがどうのって赤月君が言っていたし、売り場周ったとき、ガイアカラーていう塗料ややたら大きい液体の商品、あったっけ。
男性客は、こちらを見ると頷き答えた。
「そうですそうです。今全然なくて」
それを聞いて、私は鬼頭さんや他のスタッフから教わった言葉を口にする。
「すみません、入荷は未定になります」
これは魔法の言葉。
おもちゃもゲームもプラモも全部、いつ入るか聞かれたらこう答えるように、と教わった。
実際、いつなにが入荷するか本当にわからないらしいから嘘はない。
そんな私の答えに、男性は、そうですか、と残念そうに呟く。
「申し訳ございません」
と、頭を下げてレジに戻ろうとすると、再び声をかけられた。
「あの、すみません、注文とかってできますか?」
私は振り返り、再び頭を下げる。
「申し訳ございません、注文は承ってないです」
そう答えるとさらにそのお客さんは残念そうな顔になる。
鬼頭さんからは、塗料とかは注文うけないで、と言われたからそれでいいんだろうけれど、お客さんの残念そうな顔をみると少し心が痛む。
これが黒物家電ならレジで発注してとかできることがあるのに、おもちゃはそう簡単にはいかないらしい。
うーん、もどかしい。
そのお客さんは、私の胸元の名札をちらっと見て言った。
「珍しい名字ですね」
「あ、あぁ、よくいわれます」
名札に書かれた「せんごく」の文字。
確かに仙石って名字は珍しい。親族以外で見たことがないし、レジにいるとたまに言われる。
お客さんは私の顔を見て首を傾げて言った。
「あの……店員さん、今まで見たことないですけど最近ここにきたんですか?」
ずいぶんと話しかけてくる人だな、と思いつつ、私は笑顔を張り付けて答える。
「そうですね。先月からこちらに配属されました」
「女性の社員さん、珍しいから……」
そう言いながらそのお客さんは私の名札と顔を交互に見る。
その様子が何かこう、嫌な感じがして寒気が走る。
なんだろう、この感じ。
それでも私は愛想笑いを張り付けて答えた。
「そうなんですか?」
「俺、ここができた二十年前から通ってますけど、あんまり見たことないですね。あと、人の入れ替わり激しいし、すぐいなくなるし」
そうお客さんは早口でまくしたてる。
そ、そ、そこまで……?
まあ私がここに異動になった理由が、社員がひとりしかいなくて、誰に声かけても断られたから、だったけど。
そういえばなんで皆、異動嫌がったんだろう。微妙に田舎だからかな。
鬼頭さんに聞いたら教えてくれるだろうか。
私が微妙な顔になったのに気がついたのか、お客さんはブンブンと首を横に振る。
「す、すみません、変なこと言って。あ、ありがとうございました」
と、慌てた様子で頭を下げて去っていく。
なんだか変なお客さんだったな。
その背中を見送り、
「私、ここでやっていけるのかな……」
と、思わず呟いた。