チーターとガレット
「今日は、シーフードわさびのクレープも食べてみたかったなって」
率直に気持ちを吐き出すと「食材の準備がなくて。ええと」と視線を泳がせたが「すみません、また必ずやりますので」と両手を合わせて頭を下げてきた。
すると、隣のテーブルにいた女性客が、ふっと笑い声を漏らした。うるさくしてしまったかと思い謝ろうとしてちらりと見ると、目が合った。
三十代前半くらいだろうか。ほとんどメイクもしていない、健康的に日焼けした肌に黒髪のロングヘア。ゴールドの華奢なネックレスと飾り気のない白いシャツの爽やかさが、野性動物のような自然のままの美しさを引き立てる。
千枝がつい見惚れていると、
「あ、僕の姉です。すみません」
と、店主の彼がはにかんだ笑みを浮かべた。
ただただ驚く千枝に「弟がお世話になっております」と、椅子から立ち上がって頭を下げてきた。気の利いた言葉が思い浮かばずに「こちらこそお世話になっております」と返したが、これでは仕事のやり取りのようだ。
そろそろ行くね、とテーブルに千円札を二枚置き、彼女はすっと荷物を取った。
見送りに行った彼との、小声での話声が断片的に聞こえてくる。良かったね、頑張ってね。背中に腕を回して別れを惜しむように弟を抱きしめ、千枝に「よろしくお願いします」と会釈をして帰っていった。
年の離れた弟を気遣う、優しい姉というかんじだ。