チーターとガレット

「お騒がせしました」
 彼の頬と耳は真っ赤に紅潮している。なぜだかそれを見てはいけないような気がして、千枝は今週の総菜と書かれたメニューに目を落とした。

〈オイルサーディンとモッツァレラチーズの揚げクレープ~カレー風味~〉
〈牛肉ときたあかりのタルト〉

 また、悩む二択を迫られる。揚げクレープが想像つかないが、それがどんなものであってもおいしいに違いないと思えるのは、先週のキャロットラペの影響なのだろうか。

「牛肉ときたあかりのタルトをお願いします。揚げクレープは明日食べにきますので」
「えっ、本当ですか、姉がよろしくお願いしますって言ったからって、気を遣わなくて大丈夫ですよ」

「そういうわけではなく、週に二回のチャンスなので食べ逃したくないなって」
 彼は驚くそぶりを見せ、かしこまった様子で頭を下げる。

「お姉さんは、どちらを選んだんですか」
「悩んでタルトにしていました。店をオープンしたって言ったら色々心配して、わざわざ食べに来てくれたんです。普段は仕事でケニアにいるんですけれど」

「ケニアってアフリカ大陸の?」
「そうです、現地の旅行会社に勤めているんです」
 千枝の頭の中にいつかドキュメンタリー番組で見た、サバンナの風景が広がった。大群を成したヌーと呼ばれるウシ科の動物が、草地を求めて大移動する姿を上空からとらえた映像は同じ地球上の出来事とは思えず、いつかは自分の目で見てみたいと思わせるほど壮大だった。

 ケニアで知っていることといえばそれくらいで、観光と言っても他に何があるのか、まったく出てこない。
< 11 / 14 >

この作品をシェア

pagetop