チーターとガレット

「どうでしょう。でも実は姉からこの話を聞いたから、思い切って店をオープンさせたんです。もしこんな話を聞かなかったら、いつか店を持ちたいという気持ちも、いつかのまま終わってしまっていたかもしれないですから」
「きっかけのひとつ、みたいな」

「そうそう、そんなかんじです。いつの時代にもこういった話は出てきますけれど、信じるとか信じないとか、結局自分のタイミングもあるんだなあって思いましたよ」
「わたし、何も思いつかないかも。やりたいこと」

 世の中には、色々な価値観の人がいるものだ。自分だったらどうするだろう、と考えることさえ、宝くじで一等が当たったら何を買おうかと妄想するに等しい気もしてしまう。

「すごいなあ。それはやりたいこと、ちゃんと実現しながら生きてるっていうことじゃないんですか」
 彼は無邪気な声で言うが、それは違う。そもそも日々に追われているだけで、自分がこの先何をしたいかなんて、考えたこともなかったのだ。

 千枝が押し黙ると「話し込んですみません」と彼は我に返ったように、メニューを回収して足早にキッチンに向かっていった。

 地球がもうすぐ終わる。信じがたい話だった。すぐにでもスマホで調べたかったが、彼らを疑っているようで気が引けて、テーブルに置かれていた一輪挿しの、紫色の花を見つめた。
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