チーターとガレット
 しばらくして、涼しげなガラスの皿の中央に、品よく盛られた、キャロットラペが運ばれてきた。ベビーリーフが添えられているが、ほぼニンジンだった。

「あの、これは?」
「どちらを頼んでも、別でサラダを付けることにしているんです」

「そうなんですね、ありがとうございます」
 千枝は彼に笑顔を向けながらも、内心冷や汗をかいていた。ニンジンの風味が苦手だった。子どもの頃給食で、残さずに食べなさいと言われて吐き戻してしまってからは、見るのも嫌になってしまっていた。だがこの状況でまったく手をつけないまま残すのは、大人としてどうなのか。

 フォークで恐る恐るキャロットラペを掬い、心を無にして口の中に押し込んだ。
 細切りで見た目はしんなりしているが、歯ごたえもある。酸味は控えめで、甘みをほのかに感じるが、青臭さはない。砕いたナッツが混ぜてあって、食感もいい。

 いつの間にニンジン嫌いを克服していたのか。それとも、このキャロットラペだけが特別なのか。
彼が器を下げに来たとき、千枝はつい声をかけていた。

「私、実はニンジンが苦手だったんですけれど。これ、すごくおいしかったです。おかわりしたいくらいに」
「え、本当ですか」

「青臭さが全然なくて。何か特別な調理法なんですか?」
「いえいえ、本当にシンプルです。オリーブオイルとビネガーと塩とはちみつと。あとは少し味を整えるというかんじで。バランスが良かったのかな?」
 実はまだ改良中で、と照れ臭そうに笑う。
< 4 / 8 >

この作品をシェア

pagetop