隣の席の悪魔―気が向いたら、また―
隣の席の悪魔
同志発見
中学の入学式の日。
私は初めて、
“同志”を見つけた。
◇
「ちびーーーーーーー!!!
何組だったー??」
入学式が終わったばかりの体育館に
やたら響く声。
渡り廊下の手前に貼り出されたクラス名簿も
私にとっては位置が高い。
うるさい。
ほんっとにうるさい。
「しぃーー!!」
口元に指を当てながら、
私は振り返る。
「声大きいってば!」
「へへ、ごめんごめん!」
まったく悪びれてない顔で笑う男子たちを、
軽く睨んだ。
小学校から一緒の友達。
そして、
昔から私を散々バカにしてきた
悪いやつら。
私のあだ名は――
チビ。
星野紬。
現在の身長、
137cm。
ちなみにーー
小学校卒業時の女子平均身長、
約148cm。
男子平均、
約150cm。
……つまり。
私は、
かなり小さい。
「で、何組?」
「2組」
「おっ、俺ら1組!」
「はいはい」
適当に返事をしながら、
私は歩き出した。
「つむぎ、その、寂しいと思うけどーー」
横を歩く仲良しのアスミを見上げると、
なんとも言いづらそうに苦笑いをしている。
「大丈夫、とりあえず隣の席の人に、話しかけるし!」
今日から中学生。
新しい制服。
新しい教室。
新しい友達。
なんだか少し、
大人になった気分。
……なのに。
これは何の嫌がらせ?
仲良しの友達はみんな別のクラス。
それに、
「首、痛っ……」
思わず、
首をさする。
だって。
みんな、
デカすぎる!
見渡す限り、
背の高い人ばっかり。
女子だって、
少なくとも140、
いや145センチは超えてそうだし
男子なんてもう、
見上げないと顔が見えない。
話すたび、
首が疲れる。
成長期って、
不公平すぎない?
少し長めに作ってもらった制服のそでを
まくりあげながら
何度目かのため息をつく。
「健闘を祈るよ、また明日ね」
入学祝いに家族でご飯なんだ、と
ひと足早く下駄箱を去るアスミに手を振りながら
自分の靴に手をかけた時
ふと目に入ったのは、
隣の下駄箱に手を伸ばす
ひとりの男子。
…え?
ーーーー小さい。
待って。
ちっちゃい!!!
感動した。
ものすごく感動した。
隊長!!!
ついに発見しました!!!
同志です!!!
仲間です!!!
思わず、
目線のほぼ変わらないであろう横顔を
じーーーーっと見つめる。
少しだけくるんとした短い髪。
白い肌。
切れ長の目。
薄い唇。
静かそう。
そして。
小さい。
ありがとう神様。
ちゃんといた。
私の仲間。
その男の子は、
固まったままの私の視線なんて
まるで気づかないまま、
さっさと帰って行った。
第一印象は。
“小さくて可愛い”
まぁ、
そんな感じだった。
――その時は。
ただそれだけ。
まさか。
その男の子が、
私の中学生活を
ぐちゃぐちゃにするなんて。
この時の私は、
まだ知らなかった。
◇
翌日。
中学校最初の、ちゃんとした登校日。
昨日の入学式は
式典の後そのまま下校で
友達を作る暇なんてまるでなかったから
今日が、
今日が本当に大事なのだ。
友達ができるかどうか。
学校生活を楽しめるか。
私は初日にかけている!
私の席は――
窓側、
後ろから2番目。
悪くない。
良い位置。
悪くない。
問題は、
隣。
黒板に貼り出された席次表には
朝日奈 空
と書かれてる。
空って、あの➖
ソワソワと周りを見渡しながら
席に座った、その時。
ガタン。
隣の席が引かれる音。
「……え」
思わず顔を上げると
そこにいたのは
昨日見つけた、
“同志”だった。
え。
うそ。
うそでしょ。
隣!?
神様!!
ありがとうございます!!!
心の中で
盛大に拍手する。
思わず、隣の同志を見つめると
相手が、
ゆっくりこちらを見る。
切れ長の目。
……なんか怖い。
でも
大丈夫、小さいし。
「……」
いやいや
「……」
無言て。
気まずい。
ここは私が行くしかない。
だって
同志だもん。
私はぐいっと身を乗り出した。
「ねぇ!!」
「……なに」
低っ。
声、
思ったより低っ。
「空くんだよね!?」
ぴくっと、
空くんの眉が動いた。
「……なんで知ってんの」
「有名だもん!」
学年トップ候補。
昨日、アスミが言ってた。
名前は空。
静かで、
あんまり喋らない。
とにかく頭が良いらしい。
まさか、私の同志がその子だとは、思わなかったけど。
「初めましてって言いたいとこだけど!
それがさぁ、初めましてじゃないんだよっ」
「……は?」
少しだけ嫌そうな顔。
ふふん。
聞きたいでしょう?
聞きたいよねぇ?
私は得意げに、
胸を張った。
「私ね!昨日、空くん見つけたの!」
「……は?」
「小さい人いたーーー!!
って思って!」
………
……あれ?
なんか。
空気、冷たくない?
空くんの目が、
すぅっと細くなる。
そして
ひと言。
「……お前、
喧嘩売ってんの?」
私は初めて、
“同志”を見つけた。
◇
「ちびーーーーーーー!!!
何組だったー??」
入学式が終わったばかりの体育館に
やたら響く声。
渡り廊下の手前に貼り出されたクラス名簿も
私にとっては位置が高い。
うるさい。
ほんっとにうるさい。
「しぃーー!!」
口元に指を当てながら、
私は振り返る。
「声大きいってば!」
「へへ、ごめんごめん!」
まったく悪びれてない顔で笑う男子たちを、
軽く睨んだ。
小学校から一緒の友達。
そして、
昔から私を散々バカにしてきた
悪いやつら。
私のあだ名は――
チビ。
星野紬。
現在の身長、
137cm。
ちなみにーー
小学校卒業時の女子平均身長、
約148cm。
男子平均、
約150cm。
……つまり。
私は、
かなり小さい。
「で、何組?」
「2組」
「おっ、俺ら1組!」
「はいはい」
適当に返事をしながら、
私は歩き出した。
「つむぎ、その、寂しいと思うけどーー」
横を歩く仲良しのアスミを見上げると、
なんとも言いづらそうに苦笑いをしている。
「大丈夫、とりあえず隣の席の人に、話しかけるし!」
今日から中学生。
新しい制服。
新しい教室。
新しい友達。
なんだか少し、
大人になった気分。
……なのに。
これは何の嫌がらせ?
仲良しの友達はみんな別のクラス。
それに、
「首、痛っ……」
思わず、
首をさする。
だって。
みんな、
デカすぎる!
見渡す限り、
背の高い人ばっかり。
女子だって、
少なくとも140、
いや145センチは超えてそうだし
男子なんてもう、
見上げないと顔が見えない。
話すたび、
首が疲れる。
成長期って、
不公平すぎない?
少し長めに作ってもらった制服のそでを
まくりあげながら
何度目かのため息をつく。
「健闘を祈るよ、また明日ね」
入学祝いに家族でご飯なんだ、と
ひと足早く下駄箱を去るアスミに手を振りながら
自分の靴に手をかけた時
ふと目に入ったのは、
隣の下駄箱に手を伸ばす
ひとりの男子。
…え?
ーーーー小さい。
待って。
ちっちゃい!!!
感動した。
ものすごく感動した。
隊長!!!
ついに発見しました!!!
同志です!!!
仲間です!!!
思わず、
目線のほぼ変わらないであろう横顔を
じーーーーっと見つめる。
少しだけくるんとした短い髪。
白い肌。
切れ長の目。
薄い唇。
静かそう。
そして。
小さい。
ありがとう神様。
ちゃんといた。
私の仲間。
その男の子は、
固まったままの私の視線なんて
まるで気づかないまま、
さっさと帰って行った。
第一印象は。
“小さくて可愛い”
まぁ、
そんな感じだった。
――その時は。
ただそれだけ。
まさか。
その男の子が、
私の中学生活を
ぐちゃぐちゃにするなんて。
この時の私は、
まだ知らなかった。
◇
翌日。
中学校最初の、ちゃんとした登校日。
昨日の入学式は
式典の後そのまま下校で
友達を作る暇なんてまるでなかったから
今日が、
今日が本当に大事なのだ。
友達ができるかどうか。
学校生活を楽しめるか。
私は初日にかけている!
私の席は――
窓側、
後ろから2番目。
悪くない。
良い位置。
悪くない。
問題は、
隣。
黒板に貼り出された席次表には
朝日奈 空
と書かれてる。
空って、あの➖
ソワソワと周りを見渡しながら
席に座った、その時。
ガタン。
隣の席が引かれる音。
「……え」
思わず顔を上げると
そこにいたのは
昨日見つけた、
“同志”だった。
え。
うそ。
うそでしょ。
隣!?
神様!!
ありがとうございます!!!
心の中で
盛大に拍手する。
思わず、隣の同志を見つめると
相手が、
ゆっくりこちらを見る。
切れ長の目。
……なんか怖い。
でも
大丈夫、小さいし。
「……」
いやいや
「……」
無言て。
気まずい。
ここは私が行くしかない。
だって
同志だもん。
私はぐいっと身を乗り出した。
「ねぇ!!」
「……なに」
低っ。
声、
思ったより低っ。
「空くんだよね!?」
ぴくっと、
空くんの眉が動いた。
「……なんで知ってんの」
「有名だもん!」
学年トップ候補。
昨日、アスミが言ってた。
名前は空。
静かで、
あんまり喋らない。
とにかく頭が良いらしい。
まさか、私の同志がその子だとは、思わなかったけど。
「初めましてって言いたいとこだけど!
それがさぁ、初めましてじゃないんだよっ」
「……は?」
少しだけ嫌そうな顔。
ふふん。
聞きたいでしょう?
聞きたいよねぇ?
私は得意げに、
胸を張った。
「私ね!昨日、空くん見つけたの!」
「……は?」
「小さい人いたーーー!!
って思って!」
………
……あれ?
なんか。
空気、冷たくない?
空くんの目が、
すぅっと細くなる。
そして
ひと言。
「……お前、
喧嘩売ってんの?」