隣の席の悪魔【旧版】


夜。

駅前。

提灯の灯り。

屋台の匂い。

夏祭りの日の空気って、
なんでこんなに特別なんだろ。

「つむぎ、
浴衣かわいー!」

待ち合わせ場所。

女子たちが、
一気に声を上げる。

「えへへ、
ほんと!?」

私は嬉しくなって、
浴衣の袖をふわっと持ち上げた。

「帯頑張ったんだよねー!」

「似合ってる!」

「かわいい!」

「嬉しいー!」

そのまま、
私はくるっと振り向いて、
空くんを見る。

「空くん、どう?」

わざとらしく、
首を傾げる。

すると。

空くん。

少しだけ、
固まった。

しかも。

珍しく、
言葉が出てこない。

そのあと。

視線を逸らしたまま、
ぽつり。

「……遅い」

「えー!?
感想、それ!?」

私は思わず叫ぶ。

すると。

後ろで葛西くんが吹き出した。

「絞り出して、それ」

「うるさい」

空くんの耳は、
ちょっと赤い。
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