隣の席の悪魔【旧版】


祭り会場へ近づくにつれて、
人が増えていく。

屋台。

笑い声。

提灯。

夏の匂い。

人混みに押されながら、
私は必死に前を見る。

その時。

女子のひとりが、
振り返って笑った。

「つむぎ、
もう迷子にならないでよー?」

修学旅行のことだ。

「大丈夫!!」

私は胸を張る。

「今日は絶対はぐれない!」

すると。

葛西くんが、
呆れたみたいに笑った。

「空、
ちゃんと見とけよ」

「なんで俺だよ」

「保護者だろ」

「違う」

空くんは、
小さくため息をつく。

その時。

ぐいっ。

何かが、
私の手へ押し込まれた。

「え?」

見ると。

空くんのタオル。

「これ掴んどけ」

「えー?」

「お前、
すぐ消える」

失礼。

でも。

私は素直に、
タオルの端を握った。

すると。

空くんが、
少しだけ歩き出す。

私はその後ろを、
引っ張られるみたいについて行った。

なんか。

ちょっと犬みたいで、
悔しい。
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