隣の席の悪魔【旧版】


夜道。

提灯の灯り。

遠くで、
花火の音が響く。

どーん。

空が光る。

私は小さく呟いた。

「……花火、
見れなくてごめん」

すると。

空くんが、
少しだけ首を傾ける。

「別に」

短い声。

そして。

ぽつり。

「また来ればいいだろ」

その瞬間。

胸が、
ぎゅってなる。

……来年。

空くん、
ここにいないじゃん。

遠くの高校に、
行くんでしょう?

私は何も言わずに、
空くんの背中へ、
少しだけ顔を埋めた。

その時。

空くんが、
続ける。

「ヨーヨー、
また取ってやるし」

私は思わず小さく笑った。

「……また割っちゃうかも」

すると。

空くんが、
少しだけ黙った。

そのあと。

「……今度は」

少しだけ間を置いて。

「俺が気をつけとく」

夜道。

花火の音。

空くんの言葉だけが、
やけに近く聞こえた。

私は何も言えなかった。

その代わり。

空くんの背中へ、
ぎゅっとしがみつく。

遠くで、
また花火が開く。

夜風。

祭囃子。

あったかい背中。

「……夏、
終わらなきゃいいのに」

その瞬間。

空くんの背中へ回った手に、
少しだけ力が込められた。

遠くで、
また花火が開く。

私はもう一度、
空くんの背中へ、
ぎゅっとしがみついた。
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