隣の席の悪魔【旧版】


「眠れなかった」

空くんが、
ぽつりと言う。

「空くんも?」

「ん」

「私も」

私は小さく笑った。

そのまま。

私も空くんも、
夜空を見上げた。

静か。

でも。

落ち着く。

その時。

空くんが、
ぽつりと言った。

「修学旅行、
疲れる」

私は思わず笑った。

「空くんっぽい」

空くんは星を見たまま、
少し黙る。

そして。

小さく息を吐いた。

「……いつもの方が楽」

え。

心臓が、
どくんと脈を打つ。

その時。

空くんが、
少しだけこっちを見た。

そして。

ふっと、
小さく笑う。

「……走りたいよな」

その瞬間。

いつもの帰り道が、
胸の中へ戻ってきた。

夕焼け。

星空。

並んで走る足音。

そして。

胸の奥のざわざわが、
少しだけ静かになった。

私は小さく笑った。

「……うん。
走りたい」

夜風が吹く。

星が、
少し滲んで見えた。
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