隣の席の悪魔【旧版】
◇
昇降口。
雨の音。
「空くん!!」
追いつく。
空くんが、
立ち止まる。
でも。
振り向かない。
「……なに」
低い声。
「……なんか、
あった?」
「別に」
絶対嘘。
「空くん」
すると。
空くんがぽつりと言った。
「……あいつと帰れば」
……え?
「……なんでよ」
空くんを見る。
耳、
赤い。
「……もしかして」
私は空くんの顔を、
横から覗き込む。
「嫌だった?」
ぴたり。
止まる空気。
空くんが、
ゆっくり振り向く。
「……うざ」
でも。
やっぱり耳は赤い。
「へへ」
「なに」
「べつにー?」
むっとした顔で歩き出す空くん。
「あ、待ってよー!!」
……でも。
空くんの歩く速度は、
いつもより少し遅い。
……待ってくれてる。
私は慌てて走り出した。
その瞬間。
つるっ。
「うわっ!?」
あ、
転ぶ――
そう思った瞬間。
ぐいっ。
腕を引かれる。
気づけば。
空くんが、
すぐ近くにいた。
「……なんでいつも、
そうなんの」
低い声。
心臓が鳴る。
「ご、ごめん……」
空くんは、
少しだけ眉を寄せたまま、
私を見る。
雨の匂い。
制服。
いつもより少し跳ねた髪。
……近い。
その時。
ふと、
思った。
「……空くん」
「なに」
「……背……」
空くんが、
少しだけこっちを見る。
心臓。
うるさい。
でも次の瞬間。
私は慌てて視線を逸らした。
「……なんでもない」
空くんは数秒黙ったまま、
私を見る。
そして。
ふと。
空くんの視線が落ちた。
空くんの手。
私の手首を掴んでる。
熱い。
男の子の手。
心臓は、
相変わらずうるさい。
数秒の沈黙。
夕方の風。
雨の音。
私も、
空くんも。
黙ったまま。
その時。
空くんの指先が、
ほんの少し動いた。
手首を掠める。
なぞるみたいに。
空くんは、
何かを迷うみたいに、
一瞬だけ黙った。
そのあと。
はっとしたように、
ぱっと手を離す。
「………帰る」
え。
空くんは前を向いたまま、
少し早歩きになる。
「え、待って!!」
私は慌てて追いかけた。
でも。
顔が見れない。
今の、
なに。
なんだったの。
すると。
前を向いたまま、
空くんがぽつりと言った。
「……危ないから」
「え?」
「ぼーっと歩くな」
短い声。
少しだけ掠れてた。
私は、
隣に並びながら、
そっと自分の手を見る。
まだ、
少し熱い。
その時。
空くんが、
ちらっとこっちを見る。
「……なんで笑ってんの」
え。
私、
笑ってた?
私は慌てて口元を押さえる。
「笑ってない!!」
「笑ってる」
「空くんのせい!」
むすっと口を尖らせて歩き出す私に、
「濡れる」
空くんはそう言って、
自分の傘を少し寄せた。
傘の下。
私たちの肩は、
少しだけ近かった。
昇降口。
雨の音。
「空くん!!」
追いつく。
空くんが、
立ち止まる。
でも。
振り向かない。
「……なに」
低い声。
「……なんか、
あった?」
「別に」
絶対嘘。
「空くん」
すると。
空くんがぽつりと言った。
「……あいつと帰れば」
……え?
「……なんでよ」
空くんを見る。
耳、
赤い。
「……もしかして」
私は空くんの顔を、
横から覗き込む。
「嫌だった?」
ぴたり。
止まる空気。
空くんが、
ゆっくり振り向く。
「……うざ」
でも。
やっぱり耳は赤い。
「へへ」
「なに」
「べつにー?」
むっとした顔で歩き出す空くん。
「あ、待ってよー!!」
……でも。
空くんの歩く速度は、
いつもより少し遅い。
……待ってくれてる。
私は慌てて走り出した。
その瞬間。
つるっ。
「うわっ!?」
あ、
転ぶ――
そう思った瞬間。
ぐいっ。
腕を引かれる。
気づけば。
空くんが、
すぐ近くにいた。
「……なんでいつも、
そうなんの」
低い声。
心臓が鳴る。
「ご、ごめん……」
空くんは、
少しだけ眉を寄せたまま、
私を見る。
雨の匂い。
制服。
いつもより少し跳ねた髪。
……近い。
その時。
ふと、
思った。
「……空くん」
「なに」
「……背……」
空くんが、
少しだけこっちを見る。
心臓。
うるさい。
でも次の瞬間。
私は慌てて視線を逸らした。
「……なんでもない」
空くんは数秒黙ったまま、
私を見る。
そして。
ふと。
空くんの視線が落ちた。
空くんの手。
私の手首を掴んでる。
熱い。
男の子の手。
心臓は、
相変わらずうるさい。
数秒の沈黙。
夕方の風。
雨の音。
私も、
空くんも。
黙ったまま。
その時。
空くんの指先が、
ほんの少し動いた。
手首を掠める。
なぞるみたいに。
空くんは、
何かを迷うみたいに、
一瞬だけ黙った。
そのあと。
はっとしたように、
ぱっと手を離す。
「………帰る」
え。
空くんは前を向いたまま、
少し早歩きになる。
「え、待って!!」
私は慌てて追いかけた。
でも。
顔が見れない。
今の、
なに。
なんだったの。
すると。
前を向いたまま、
空くんがぽつりと言った。
「……危ないから」
「え?」
「ぼーっと歩くな」
短い声。
少しだけ掠れてた。
私は、
隣に並びながら、
そっと自分の手を見る。
まだ、
少し熱い。
その時。
空くんが、
ちらっとこっちを見る。
「……なんで笑ってんの」
え。
私、
笑ってた?
私は慌てて口元を押さえる。
「笑ってない!!」
「笑ってる」
「空くんのせい!」
むすっと口を尖らせて歩き出す私に、
「濡れる」
空くんはそう言って、
自分の傘を少し寄せた。
傘の下。
私たちの肩は、
少しだけ近かった。