隣の席の悪魔【旧版】

文化祭の夕焼け

文化祭当日。

校内は、
いつもより騒がしかった。

飾り。

笑い声。

焼きそばの匂い。

廊下を歩くだけで、
色んな音が混ざってくる。

学校全体が、
いつもより少しだけ浮ついて見えた。

廊下には、
大きく飾られた、
写生大会の入賞作品。

夕方と夜の間みたいな空。

駐輪場。

フェンス。

伸びる影。

誰もいない景色なのに。

私には、
ちゃんと“いつもの時間”に見えた。

「これすごくない?」

「空綺麗!」

知らない先輩たちが話してる。

なんか。

恥ずかしい。

でも。

嬉しい。

胸の奥が、
少しだけあったかい。

その時。

「……いた」

低い声。

振り向く。

「空くん!」

思わず笑う。

空くんは展示の前まで来ると、
少しだけ絵を見上げた。

静か。

ただ。

ちゃんと見てる。

その横顔を見てるだけで、
なんか落ち着かなかった。

その時。

空くんが、
ぽつり。

「……いつもの色」

え。

私は思わず、
空くんの顔を覗く。

空くんは前を向いたまま、
小さく続ける。

「夕方の」

その言葉だけで。

空くんも、
同じ景色を見てたんだって、
分かった。
< 88 / 150 >

この作品をシェア

pagetop