隣の席の悪魔【旧版】


文化祭終わりの校庭。

空は、
夕焼けと夜の間みたいな色をしていた。

オレンジ。

紫。

少しずつ夜になっていく空。

あの絵と、
同じ。

風が吹く。

静かなグラウンド。

私は走りながら、
少しだけ口を尖らせる。

「……カラオケ、
行かなくてよかったの……?」

私は前を向いたまま、
小さく続ける。

「走る約束してたせいで、
断ったんだよね?」

すると。

空くんは、
少しだけ眉を寄せた。

「俺がそうしたかったから、
断った」

え。

空くんは、
前を向いたまま続ける。

「……こっちの方が、いい」

あまりにも普通の声。

だから余計、
心臓が跳ねる。

私は思わず、
走りながら視線を逸らした。

熱い。

「……そっか」

やっとそれだけ返す。

その時。

「……だから」

「え?」

空くんが、
少しだけこっちを覗き込む。

近い。

「機嫌直せ」

なんなの。

この人。

私は慌てて前を見る。

「し、知らない!!」

走る速度を上げる。

「逃げんな」

後ろから、
少し笑う声。

悔しい。

でも。

嬉しい。

その時。

ふと空を見上げる。

オレンジと紫が混ざる空。

あの日、
描いた空と同じ色。

風。

静かな校庭。

隣を走る空くん。

夕方と夜の間。

私は、
この時間が好きだ。
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