秀麗畏怖極道は甘すぎる
8話 俺だけにしとき
「うーん、せっかくのイケメンが台無しな気がします。ホットアイマスクとかおすすめですよ。」
なんて言いながら凛音の目元を温めていた事にハッとして手を引っ込めた。
無意識に触ってしまった。殺されるか?とさくは思う。
引っ込められた手。温もりが消えた目元。
凛音の体が無意識に前のめりになった。逃がさへん。まだそこにいろ。
「殺すわけないやろアホ。顔に出てんねん。」
声は低かったが怒気はゼロだった。
凛音の手がさくの手首をそっと掴んだ。
力は入れていない。振り払えば簡単に外れる程度の拘束。
「ホットアイマスクて。そんなもんよりええもんあるわ。
……もっかいやって。」
「…あの…私の手を無料ホットアイマスク代わりにするのやめてもらっていいですか。」
「無料て言うなや。金なら払うで?」
冗談めかして言いながら、掴んだ手首を離さない。
親指をさくの脈の上にちょんと乗せている。
とくとくと伝わってくる鼓動を数えるように。
夜風に乗って煙草の残り香が漂う裏口。
二人きりの空間。
凛音の瞳がとろりと熱を帯びた。
「なぁ、頼むわ。ちょっとだけ。」
白銀の髪から覗くその淡いブルーの瞳と、低く甘えた声がやけに色っぽく見えて。
「…しょうがないな。特別ですよ。」
そう言って両手で凛音の目元を温めた。
温かい掌が両目に覆いかぶさる。
視界が暗くなって、代わりにさくの体温だけが世界を満たした。
凛音の呼吸が深く、ゆっくりになった。まるで眠りに落ちる寸前のように。
「……特別、な。」
噛みしめるように呟いた。「特別」。
数秒の沈黙の後、凛音はふっと笑った。
「お前、自覚ある?今俺にめちゃくちゃ優しくしてるで。」
「はい。私、基本的に優しいので。」
当たり前のように言った。
凛音は目を開けた。至近距離にさくの澄ました顔がある。
「基本的にて。俺以外にもこんなことすんのか。」
「それは…時と場合によると思います。わかんないですけど。」
顎に手をやってさくは考えている。
癪に障った。
顎に当てられたさくの手を見つめながら、
「他の男にはすんな。」
ふざけた調子ではなく、静かな声で言った。
「…こんなこと男性にする機会そんなにないと思います。」
「そんなにってことはあるんかい。」
機会がある可能性が存在すること自体が嫌なんやけど。は口に出さない。
「可能性としてはあるかもってだけで、今まで誰かにやったとか、そういう事はないです。
そもそも、手で目を温めろなんて、男性どころか女性にもお願いされた事なんてないです。」
…。こいつほんまにアホや。
今まで誰にもやってない。その情報だけで少しだけ胸のざわつきが収まった。
「ならええわ。これからも俺だけにしとき。」
さらっと言った。交際もしていない相手への独占宣言。
凛音の口調はあまりに自然だった。
「…えっと、わかりました。確かにヤクザに迂闊に触れるのはよくないですから。」
了解に独占欲が膨れ上がると同時に、凛音が込めた感情の半分も届いていないのに脱力した。
だが結果として「俺だけ」という言葉は通った。
「ヤクザとか関係なしに、俺だけな。もう遅いからちゃっちゃと帰り。」
念を押しながら、はよ行けと背中も押した。
「あ、お疲れでした。」
そういってさくは歩いていった。
姿が見えなくなるまで見送って、「気ぃつけて帰りや」とLINEを送った。
凛音の白銀の髪が夜風で揺らされ、月明かりで儚く輝く。
「……はよ会いたいなぁ。」
今別れたばかりの相手を思いながら、小さく呟いた。
なんて言いながら凛音の目元を温めていた事にハッとして手を引っ込めた。
無意識に触ってしまった。殺されるか?とさくは思う。
引っ込められた手。温もりが消えた目元。
凛音の体が無意識に前のめりになった。逃がさへん。まだそこにいろ。
「殺すわけないやろアホ。顔に出てんねん。」
声は低かったが怒気はゼロだった。
凛音の手がさくの手首をそっと掴んだ。
力は入れていない。振り払えば簡単に外れる程度の拘束。
「ホットアイマスクて。そんなもんよりええもんあるわ。
……もっかいやって。」
「…あの…私の手を無料ホットアイマスク代わりにするのやめてもらっていいですか。」
「無料て言うなや。金なら払うで?」
冗談めかして言いながら、掴んだ手首を離さない。
親指をさくの脈の上にちょんと乗せている。
とくとくと伝わってくる鼓動を数えるように。
夜風に乗って煙草の残り香が漂う裏口。
二人きりの空間。
凛音の瞳がとろりと熱を帯びた。
「なぁ、頼むわ。ちょっとだけ。」
白銀の髪から覗くその淡いブルーの瞳と、低く甘えた声がやけに色っぽく見えて。
「…しょうがないな。特別ですよ。」
そう言って両手で凛音の目元を温めた。
温かい掌が両目に覆いかぶさる。
視界が暗くなって、代わりにさくの体温だけが世界を満たした。
凛音の呼吸が深く、ゆっくりになった。まるで眠りに落ちる寸前のように。
「……特別、な。」
噛みしめるように呟いた。「特別」。
数秒の沈黙の後、凛音はふっと笑った。
「お前、自覚ある?今俺にめちゃくちゃ優しくしてるで。」
「はい。私、基本的に優しいので。」
当たり前のように言った。
凛音は目を開けた。至近距離にさくの澄ました顔がある。
「基本的にて。俺以外にもこんなことすんのか。」
「それは…時と場合によると思います。わかんないですけど。」
顎に手をやってさくは考えている。
癪に障った。
顎に当てられたさくの手を見つめながら、
「他の男にはすんな。」
ふざけた調子ではなく、静かな声で言った。
「…こんなこと男性にする機会そんなにないと思います。」
「そんなにってことはあるんかい。」
機会がある可能性が存在すること自体が嫌なんやけど。は口に出さない。
「可能性としてはあるかもってだけで、今まで誰かにやったとか、そういう事はないです。
そもそも、手で目を温めろなんて、男性どころか女性にもお願いされた事なんてないです。」
…。こいつほんまにアホや。
今まで誰にもやってない。その情報だけで少しだけ胸のざわつきが収まった。
「ならええわ。これからも俺だけにしとき。」
さらっと言った。交際もしていない相手への独占宣言。
凛音の口調はあまりに自然だった。
「…えっと、わかりました。確かにヤクザに迂闊に触れるのはよくないですから。」
了解に独占欲が膨れ上がると同時に、凛音が込めた感情の半分も届いていないのに脱力した。
だが結果として「俺だけ」という言葉は通った。
「ヤクザとか関係なしに、俺だけな。もう遅いからちゃっちゃと帰り。」
念を押しながら、はよ行けと背中も押した。
「あ、お疲れでした。」
そういってさくは歩いていった。
姿が見えなくなるまで見送って、「気ぃつけて帰りや」とLINEを送った。
凛音の白銀の髪が夜風で揺らされ、月明かりで儚く輝く。
「……はよ会いたいなぁ。」
今別れたばかりの相手を思いながら、小さく呟いた。