トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
それからも症例シミュレーションは続いた。

重症外傷、小児搬送、敗血症ショック、夜間山岳救助。

症例が変わるたび、空気も変わる。

そしてその度に、育成メンバーたちは何度も壁へぶつかっていた。

判断が遅れる。視野が狭くなる。役割が被る。

逆に遠慮しすぎて動けなくなる。

病院の中では出来ていたことが、“フライト”という特殊環境になるだけで一気に難しくなる。

でもその分、全員確実に吸収していた。

最初より少しずつ確実に。

そして。

気づけば時計は夜を回っていた。

「……はぁぁ……」

「もう脳みそ動かん……」

育成ドクターたちがぐったり椅子へ沈み込む。

育成ナースたちも完全に疲れ切っていた。

ヘルメットを脱ぐ音。

スクラブの襟を緩める音。

さっきまで張り詰めていた空気が、ようやく解けていく。

森崎さんが笑った。

「いやー、今日はよう頑張りました」

「みんな普通に根性ありますね」

すると真壁くんが力なく笑う。

「もう心折れそうです……」

「まだ始まったばっかりだよ」

神波さんが笑いながら追撃する。

「うわぁ……」

部屋に小さな笑いが起こる。

でもその笑い声すら、みんな疲れていた。

すると。

「皆さん、お疲れさまでした」

高城先生の低い声。

その瞬間空気が少し変わる。

「今日はここまでです」

「育成組は解散してください」

「はい!」

育成メンバーたちが立ち上がる。

でも足取りは重い。

それだけ濃い一日だったんだと思う。

「お疲れさまでした!」

「失礼します!」

次々と部屋を出ていく。

その背中を見送りながら、私は小さく息を吐いた。

……本当に、みんな頑張ってる。
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