トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
ICUへ戻っても私はどこか上の空だった。

ナースステーションでカルテを開いていても、頭の中をぐるぐる回るのはさっきの話ばかり。

「……はぁ」

小さく息が漏れる。

するとその瞬間。

「一ノ瀬さんがため息なんて珍しっすねー」

横から声が飛んできた。

振り向くと、そこには後輩の林くん。

明るくて人懐っこい性格で、フライトを目標にしている後輩だった。

「どうしたんですか、珍しく魂抜けてますよ」

「失礼ね」

そう返しながら、私は机へ置いていた資料を軽く閉じようとした。

でも林くんの視線が、そのタイトルを捉える。

次の瞬間。

「うわっ!!」

思いっきり声を上げた。

「え!?これマジですか!?」

周りのスタッフがちらっとこっちを見る。

「ちょ、声大きい」

「いやだってこれ!!」

林くんが目を輝かせながら資料を見る。

「大阪のフライトナース育成支援プロジェクトじゃないですか!」

「……知ってるの?」

「めちゃくちゃ有名です!!」

即答だった。

「これ日本初のプロジェクトですよ!?
救命界隈めっちゃ注目してます!」

“救命界隈”ってなに。

思わず少し笑いそうになる。

でも林くんは本気で興奮していた。

「指導者メンバーもやばいんですよ!」

資料を指差しながら次々話し始める。

「全国トップクラスのフライトナースとか、救命認定看護師とか、有名な人ばっか集められてて」

「……へぇ」

「しかも育成メンバーも全国から応募来てるらしいです」

「そんなに?」

「かなり倍率高かったみたいですよ」

林くんが頷く。

「俺も応募しましたもん」

「え?」

思わず顔を上げる。

すると林くんが少し苦笑した。

「でも経験年数足りなくて落ちました」

「あ……」

「最低条件ギリ満たしてなくて」

そう言いながらも、悔しそうというより憧れを語る顔だった。
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