トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
私は何も言えなくて。

ただ陽貴くんを見つめる。

すると陽貴くんが少し困ったみたいに笑った。

「そんな顔しないで」

そう言いながら、頬へそっと触れてくる。

「俺さ」

低くて優しい声。

「いつもの可愛い紗凪も大好きだけど」

「……っ」

「現場に立って必死に命繋いでる紗凪も、同じくらい大好きなんだよね」

その言葉に、息が止まりそうになる。

陽貴くんはそのまま続けた。

「フライト乗ってる時の紗凪、めちゃくちゃかっこいいじゃん」

「患者さんのこと考えて、一生懸命動いて」

「自分削ってでも助けようとして」

少し笑う。

「正直、俺には絶対できない」

「だから尊敬してる」

胸がじわっと熱くなる。

そんな風に見てくれてたんだ。

ただ“彼女”としてじゃなくて。

看護師としての私も、ちゃんと。

「だから」

陽貴くんが私の額へ軽く触れる。

「俺のために我慢はしないで」

その言葉に、心臓がぎゅっと掴まれた。

「……でも」

「寂しいよ?」

陽貴くんが即答する。

思わず少し笑ってしまう。

すると陽貴くんも笑った。

「普通にめちゃくちゃ寂しい」

「毎日拗ねる自信ある」

「陽貴くん……」

「でもさ」

真っ直ぐな目。

「東京と大阪なんて、会おうと思えばすぐ会える」

その声はすごく穏やかだった。

「俺、時間作って会いに行くから」

「ツアーで大阪行く時だってあるし」

「無理やりでも休み合わせる」

優しく微笑んでくれる。

その言葉が私の心を溶かしてくれる。

どれだけ忙しくても。

寝る時間削ってでも会いに来てくれる。

そういう人だ。

「だから」

陽貴くんが私の手をぎゅっと握る。

「紗凪が後悔しない選択して」

「俺はその隣にいるから」

その瞬間。

涙が滲んだ。

どうしてこの人は、こんなに優しいんだろう。

離れたくないはずなのに。

寂しいはずなのに。

それでも私の夢を優先してくれる。

私は堪えきれず、また陽貴くんへ抱きついた。

「っ……陽貴くん」

「ん?」

「好き……」

ぽろっと零れた声。

すると陽貴くんが一瞬固まる。

次の瞬間。

「……それ今言う?」

少し掠れた声。

顔を上げると、陽貴くんが完全に困った顔をしていた。

「無理なんだけど」

「可愛すぎて理性飛ぶ」

「っ……!」

耳まで熱くなる。

すると陽貴くんが私を抱きしめたまま、耳元で小さく笑った。

「でもほんと」

「紗凪が頑張ってきたこと、俺ちゃんと知ってるから」

その声があまりにも優しくて。

私は陽貴くんの胸へ顔を埋めた。

不安はまだある。

離れる怖さも消えない。

でも。

この人が“行っておいで”って背中を押してくれるなら。

少しだけ前を向ける気がした。
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