トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
陽貴くんがぽつりと話し始める。

「実はさ」

「ん?」

「俺も新しいドラマ決まった」

「えっ!ほんと!?」

思わず顔を上げる。

その反応が嬉しかったのか、陽貴くんが少し目を細めた。

「うん、まだ情報解禁前だけど」

「主演?」

「一応」

「すごい……!」

一気に胸が明るくなる。

忙しいのは分かってた。

最近ずっと台本読んでたし、打ち合わせも増えてた。

でも、ちゃんと形になったんだ。

「おめでとう……!」

気づけば自然に笑っていた。

すると陽貴くんが私の頭を優しく撫でる。

「ありがとう」

その顔は、アイドルとしての顔じゃなくて。

ただ、好きな仕事を頑張ってる人の顔だった。

「なんか」

陽貴くんが少し笑う。

「俺たちほんと忙しいね」

「うん……」

「会えなくて寂しい時もあるし」

「すれ違うこともあると思う」

その声はすごく穏やかだった。

私は静かに陽貴くんを見る。

すると陽貴くんが私の頬へそっと触れた。

「でもこれだけは覚えといて」

低くて甘い声。

「俺はずっと紗凪のこと想ってる」

その瞬間。

胸がいっぱいになる。

どれだけ忙しくても。

会えない時間が増えても。

この人はちゃんと言葉にしてくれる。

不安にならないように。

寂しくならないように。

真っ直ぐ伝えてくれる。

私は気づけば、少し泣きそうになっていた。

「私も…陽貴くんを想ってる」

そう言ってぎゅっと抱きついた。

「……ほんとずるい」

そう言うと、陽貴くんが小さく笑う。

「だって紗凪すぐ不安になるから」

図星すぎる。

私は陽貴くんの胸へ顔を埋めた。

規則正しい鼓動。

落ち着く体温。

安心する匂い。

——あぁ。

本当に、この人と出会えて良かった。

心の底からそう思った。

すると陽貴くんが耳元で小さく囁く。

「今日はいっぱい甘やかす」

「……っ」

「最近全然足りてないし」

その声が甘すぎて、心臓が跳ねる。

顔を上げた瞬間。

そっと唇が重なった。

優しく。

大事に触れるみたいなキス。

でも次第に深くなっていく。

「陽貴くん……」

名前を呼べば、また優しく抱きしめられる。

離れたくないみたいに。

確かめ合うみたいに。

その夜。

私たちは久しぶりに、ゆっくり同じ時間を過ごした。

忙しい毎日の中で。

不安も、寂しさもある。

それでも。

触れ合うたび、“大丈夫”って思える。

陽貴くんの腕の中は、今の私にとって一番安心できる場所だった。

甘くて。

甘くて。

優しくて。

愛おしい夜が、静かに更けていった。
< 22 / 242 >

この作品をシェア

pagetop