トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
夜中の2時。

ふと目が覚めた。

静かな部屋。

隣から聞こえる、陽貴くんの穏やかな寝息。

ぼんやりした頭のまま天井を見上げる。

……さっきまで見ていた夢を思い出した。

大阪での育成支援プロジェクト。

講義室で、森崎さんが真壁くんをいつもの調子でいじっていて。

真壁くんが「主任やめてくださいって!」って本気で焦ってる夢。

あまりにもリアルで。

思わず、クスッと笑ってしまった。

すると。

「……なに笑ってんの?」

すぐ隣から声が落ちてきた。

「……っ!?」

私はびくっと肩を揺らす。

慌てて隣を見ると。

陽貴くんが、薄暗い部屋の中でこちらを見ていた。

「……起きてたの!?」

「うん」

掠れた寝起きの声。

でも。

目は全然眠そうじゃない。

むしろ、じっと私を観察してる。

「……で?」

陽貴くんが、ゆっくり顔を近づけてくる。

「なんで笑ってたの?」

距離が近い。

近すぎる。

私は思わず視線を逸らした。

「……なんでもないよ」

そう言うと。

陽貴くんが、ふっと意味深に笑う。

「へぇ〜……」

「紗凪ちゃん、言うようになったね」

その言い方で、嫌な予感がした。

やばい。

そう思った瞬間にはもう遅かった。

するり。

陽貴くんの手が、服の裾から入り込んでくる。

「ひゃ……っ」

くすぐったさに変な声が漏れる。

その瞬間陽貴くんの手がぴたりと止まった。

数秒の沈黙。

それから。

「……紗凪ってほんとえっちだよね」

意地悪そうな声。

「ち、違……っ」

「可愛い声出してさ。煽ってんの?」

「やめて……」

恥ずかしくて顔が熱い。

でも陽貴くんは全然やめる気がない。

むしろ楽しそうだった。

「言わないなら、このままだよ?」

そう言いながら。

指先がゆっくり動く。

「っ……言い…ます……」

私は慌てて陽貴くんの腕を掴んだ。

陽貴くんが、満足そうに笑う。

「うん、よろしい」

「……普通に」

「大阪で一緒だった人の夢見ただけ」

そう言った瞬間。

空気が変わった。

「……へぇ」

低い声。

嫌な予感しかしない。

私は恐る恐る陽貴くんを見る。

暗い部屋の中。

陽貴くんがじーっとこちらを見ていた。

「……男?」

その一言に。

本能が警報を鳴らす。

ここで“うん”って即答したら絶対ダメ。

私は必死に笑顔を作った。

「……や、やだなぁ」

「違うよ」

すると。

ぎゅっ。

突然、胸を掴まれる。

「……あっ…」

恥ずかしさで、一気に身体が熱くなる。

「陽貴くん……っ」

「本当は?」

完全に疑ってる声。

さっきまでの優しい陽貴くんはどこへ…?

そう思いながらも私は慌てて首を振る。

「ち、違……」

「……男の人だけど」

「大した夢じゃないの!」

言った瞬間。

陽貴くんの目が細くなった。

あ、終わった。

そう思った。

次の瞬間。

ぐいっと抱き寄せられる。

「……紗凪」

低く落ちる声。

耳が熱くなる。

「俺以外の男で笑わないで」

その言い方が、あまりにも嫉妬丸出しで。

「俺以外の男に触れられたらどうなるかわかるよね?」

低く落ちた声。

さっきまでの甘さとは違う。

ぞくり、と背中が震えた。

……本気だ。

色んな意味で。

私は思わず喉を鳴らす。

「…う…うん」

小さく返事をした。

ここで言い返したら私に明日は来ない。
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