トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
そう思った時。
「じゃあさ」
蒼依がにやっと笑う。
「大阪まで会いに行けばよくね?」
「……行くけど」
すると3人が一斉に吹き出す。
「いや即答すぎ」
「食い気味だった」
「絶対行くと思ってました」
好き放題言われる。
でも事実だから反論できない。
「だって半年だよ?」
「会わないとか無理」
「はいはい重い重い」
蒼依が笑いながら肩を叩いてくる。
優朔は少し優しい顔をしながら言った。
「でも、一ノ瀬さんも安心すると思う、
陽貴がそうやってちゃんと支えてくれるなら」
その言葉に、少しだけ胸が熱くなる。
俺だって不安はある。
紗凪は仕事になると周り見えなくなるし。
無理するし。
ご飯ちゃんと食べないし。
寝ないし。
大阪行ったら絶対もっと頑張りすぎる。
……普通に心配。
「まぁでも」
奏がふっと笑う。
「遠距離って案外大丈夫ですよ」
「会えない時間ある分、会えた時めちゃくちゃ嬉しいですし」
「経験者?」
蒼依が聞く。
「いや僕じゃないです」
「じゃあ何情報」
「少女漫画です」
「説得力ゼロ」
また笑いが起きる。
そんな空気の中。
俺はポケットからスマホを取り出した。
ロック画面。
紗凪が笑ってる写真。
この前、動物園に行った時のやつ。
それ見ただけで、自然と口元が緩む。
「うわ」
蒼依が引いた声を出す。
「陽貴さん顔デレデレ」
「…だな」
「完全に恋する男の顔」
うるさい。
でも。否定する気にもならなかった。
「なぁ陽貴」
優朔がふっと真面目な声を出す。
「ちゃんと一ノ瀬さん支えてあげて」
「……あぁ」
「多分一ノ瀬さん、自分が思ってる以上に不安抱えてると思うから」
その言葉に、静かに頷く。
分かってる。
紗凪は強い。
でも。
強い人ほど、1人で抱え込む。
平気な顔して無理をする。
だから。
離れてても、“1人じゃない”って思わせたい。
「まぁ陽貴さんなら大丈夫か」
奏が笑う。
「毎日電話してそうですし」
「する」
「うわ」
「毎日“好き”って言ってそう」
「言うけど」
「もう黙ってくれます?俺が恥ずかしい」
蒼依が腹抱えて笑ってる。
でも。
好きなんだから仕方ない。
紗凪が疲れてる時。
不安な時。
少しでも安心できる存在でいたい。
そのためなら、重い男って言われても別にいい。
すると。
スタッフが控室を覗いた。
「みなさん次入りまーす!」
「はーい」
返事をしながら立ち上がる。
鏡に映る自分を見る。
トップアイドル。
黒騎士リーダー。
忙しくて。
プレッシャーも大きくて。
立場的に簡単じゃないことも多い。
それでも。
「よし」
小さく息を吐く。
紗凪が頑張るなら。
俺もちゃんと前向いて頑張らないと。
すると後ろから蒼依の声。
「しょっちゅう大阪に会いに行ってそう」
「多分行く」
「早」
「仕事は?」
「調整する」
「愛重っっ」
控室にまた笑い声が響く。
俺は苦笑しながら扉へ向かった。
……まぁ。
会いに行くに決まってる。
だって。
離れてても、紗凪は俺の“帰る場所”だから。