トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
その瞬間、私は反射的に立ち上がっていた。

「陽貴くん?」

「ただいまー……」

少し疲れた声。

私はぱたぱたと玄関へ向かう。

すると。

帽子とマスクを外した陽貴くんが、私を見た瞬間ふっと表情を緩めた。

「……紗凪」

その声がやけに甘い。

「おかえり」

そう言った次の瞬間。

ぎゅうっ。

思い切り抱きつかれた。

「っ、わ……!」

勢いのまま壁際まで追い込まれる。

でも抱きしめてくる腕は優しくて。

陽貴くんがそのまま私の肩へ顔を埋めた。

「……最高」

掠れた声。

思わず笑ってしまう。

「お疲れさま」

背中をぽんぽんすると、陽貴くんがさらにぎゅっと抱きしめてきた。

「もうこのまま毎日一緒にいて」

「紗凪不足すぎる」

真顔で訴えかけてくる。

私は苦笑しながら陽貴くんの背中を軽く叩いた。

「ご飯できてるよ」

「んー」

「お風呂も溜めてる」

「んー……」

全然離れる気配がない。

「陽貴くん?」

「なに」

「ご飯とお風呂、どっち先にする?」

そう聞くと。

陽貴くんがゆっくり顔を上げた。

綺麗な顔。

でもどこか甘えるみたいな目。

そして。

「……紗凪」

「え?」

低い声で名前を呼ばれる。

嫌な予感。

「なんで俺の最優先が入ってないの」

「……え?」

すると陽貴くんがにやっと笑った。

「俺、先に紗凪補給したいんだけど」

「っ……!」

一気に顔が熱くなる。

「ちょ、ちょっと……!」

「なにその反応」

「普通に恥ずかしいから……!」

私が慌てると、陽貴くんが楽しそうに笑った。

完全にからかわれてる。

でも次の瞬間。

陽貴くんがまたぎゅっと抱きしめてきた。

今度はさっきより静かに。

大事にするみたいに。

「……会いたかった」

耳元で落ちる声。

その声に、胸がぎゅっとなる。

私は小さく息を吐いて、陽貴くんの背中へ腕を回した。

「……私も」

そう返した瞬間。

陽貴くんの抱きしめる力が、少しだけ強くなった。
< 37 / 242 >

この作品をシェア

pagetop