トップアイドルは白衣の天使に恋をする-second-
「……はい、まずご飯です」

照れ隠しみたいにそう言うと。

陽貴くんが不満そうに「えー」と声を漏らした。

「紗凪不足なんだけど」

「ご飯食べないと倒れるよ」

「紗凪成分だけで生きたい」

「無理です」

即答すると、陽貴くんがくすっと笑う。

「紗凪ちゃん冷たい」

「ほら、ご飯食べるよ」

そう言いながら腕を引っ張ると、陽貴くんは素直についてきた。

そのままリビングへ入る。

テーブルの上に並べたご飯を見た瞬間。

陽貴くんが目を丸くした。

「今日もすごい」

「そんなすごくないよ」

「いや普通に嬉しい」

そう言いながら椅子へ座る。

その表情が少し柔らかくて、なんだか安心する。

「いただきます」

「いただきます」

二人で手を合わせる。

こうして向かい合ってご飯を食べる時間が、すごく好きだった。

陽貴くんは生姜焼きを一口食べた瞬間、目を細める。

「うま……」

「ほんと?」

「うん」

すぐに返ってくる言葉。

その顔があまりにも幸せそうで、自然と笑ってしまう。

「紗凪のご飯、ほんと好き」

「疲れて帰ってきてこれあると、めちゃくちゃ帰りたくなる」

さらっとそんなことを言う。

私は少し照れながら、お味噌汁をよそう。

「ちゃんと栄養取ってほしいから」

「最近また痩せた気するし」

すると陽貴くんが苦笑した。

「バレた?」

「分かるよ」

「さすが俺の彼女」

そう言いながら、テーブル越しに手を伸ばしてくる。

軽く指先を絡められて、また心臓がうるさくなる。

「……ご飯中なんだけど」

「うん」

「離して?」

「やだ」

即答だった。

しかもめちゃくちゃ自然。

「最近会えてなかった分、許して」

その言い方がずるい。

結局私は何も言えなくなる。

そんな私を見て、陽貴くんが満足そうに笑った。

「紗凪ってほんと分かりやすい」

「……陽貴くんがずるいの」

「知ってる」

全然反省してない顔。

でもこうして笑い合える時間が嬉しくて。

忙しいことも。

大阪へ行く不安も。

今だけは少し忘れられる気がした。

陽貴くんがふっと優しい目で私を見る。

「……帰ってきたって感じする」

その言葉に、胸がじんわり温かくなる。

私は小さく笑って返した。

「おかえり、陽貴くん」

すると陽貴くんが一瞬目を細める。

そして。

「……ほんと、好き」

ぽつりと落ちた声が甘すぎて。

私はまた、顔が熱くなるのを止められなかった。
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