イケオジ和風アイドル野宮のスマイル、そしてブロマンス
完成されたご飯をリビングに運ぶと、彰さんしかいなかった。
「あれ? 亮兄がいない……」
「飲み物を買いに行ったよ」
「そっか」
ということは今、彰さんとふたりきり。料理全てを並べて席に着き、ふたりで沈黙していたら彰さんが口を開いた。
「さっきは、ありがとうね」
「……ど、どれのこと?」
「無敵素敵スマイルと褒めてくれて。正直言うと、自信がなかったから……自分の笑顔に」
――嘘だぁ!!!!!!!!
全私の細胞が叫んだ。ビックリマークも溢れ出す。だけど、彰さんは本当に自信がなかったのかもしれない。自信を持つべきだ。本当に威力溢れる笑顔なのだから。
「綺麗なんです……歯並びが」
「歯並びが?」
好きな人に気持ちを素直に伝えるのは世界一緊張する。だけど、伝えたい。
私が真面目な顔をして話をする時はいつも前のめりになり一緒に真面目な表情になってくれる彰さん。今も真剣に話を聞いてくれる雰囲気。
「あ、あのですね……」
私は口角を上げて笑った顔を作る。緊張して不自然な顔してそうな気がする。多分、目が笑っていなくて顎がいつもよりも前に出ている顔。本当は、彰さんの前ではできるだけ可愛くてキラキラしている私でいたい。だけど、今は気持ちを伝えるのが大切だから。私は顔をそのままにしてジェスチャーも交えながら話を続けた。
「彰さんは笑顔の時のこことここの隙間が狭く、歯の列が長く見えるのです」
私は自分の頬と歯の間あたりを指さした。
彰さんは頷く。普段つけているコンタクトを今はつけていないから、目を若干細めて真剣に私にピントを合わせてくれているっぽい。私の仕草を確認するために――。
「綺麗に並んだ白い歯は、どの歯も彰さんのように主張しすぎずに綺麗に整列していて、小顔美人に合わせた小さめサイズで……全体の、その目の小じわも含めて、とにかく彰さんの笑顔な姿が尊くて、ずっと好っき……」
あぶないあぶない、勢いで完全告白を実行するところだった。あれ、もしかして好きって言っちゃったかも?
どうしよう。
私は頭を抱えながら下を向く。
言い過ぎたかもだけど、日頃思っていることはきちんと言葉にして伝えられたかな。緊張もしたけれど、少しすっきりもしている。ところで、彰さんの反応は?
開いた手のひらの隙間から彰さんを覗いてみる。あっ……彰さんも頭を抱えながら下を向いている。
「あの、彰さん?」
「……参ったな」
彰さんはゆっくり顔を上げ、私と視線を合わせた。コンタクトを外した瞳は再び真剣に私を見てくれているためにわずかに細められている。
「茜ちゃんに、自分の歯並びを……いや、笑顔を、そこまで細かく愛おしそうに語られるとは思わなかった。照れるじゃないか」
彰さんはいつもと同じように穏やかなトーンで言葉を発したけれど、耳のあたりがほんのり赤かった。
普段見ないその雰囲気に私の顔も心も震えた。
「さっき、キッチンで言った言葉……覚えているか?」
「『涙を流しているより、茜ちゃんの笑顔が素敵だと思うし、好きだから』……ですか?」
「そう、一文字も間違えていない。記憶力がすごいね」
彰さんは静かに頷いた。
「自分は、茜ちゃんをただ可愛い妹のように思っていたつもりだった……だが、どうやらそれは勘違いだったのかもしれない」
「えっ?」
何それ、意味深すぎる言葉――。
「自分でも気づかないうちに、違う感情になっていたらしい。今、分かった」
彰さんはゆっくり近付いてきた。触れられないけれど、温もりが伝わってくる距離に今いるし、こんな雰囲気だし……。
あぁ、平常心なんてもう無理!
「茜ちゃんが自分の笑顔を、そこまで好きだと言ってくれるなら……これからは、もっとお見せたいと思う」
真剣な表情。静かだけど熱い情熱がじんわりと伝わってきた。彰さんは嘘が嫌いだ。ということは、彰さんは確実に実行する。
私は胸がいっぱいになって、言葉が出てこない。
彰さんはそんな私をじっと見つめ、早速歯を見せ、柔らかい笑みを浮かべてくれた。
「茜ちゃん、自分の笑顔と交換?とでも言えばいいのか分からないが……ひとつこちらからのお願いも聞いてほしい」
「はい、何でしょうか」
その時、タイミング悪く玄関の鍵が回る音がした。
「ただいまー。飲み物買ってきたよ」 と、亮兄の明るい声が響く。
彰さんはゆっくり立ち上がった。
「亮、悪い。少し茜ちゃんと話がある」
今の彰さんの言い方は、全く違うけれども、妹さんとお付き合いさせてくださいみたいなトーンに似ている。亮兄は袋をテーブルに置くと、こちらを見て一瞬目を丸くし、すぐに優しい笑顔になった。
「……分かった、自分の部屋でゆっくりしてるよ」
特に理由を聞かず、でも内容を察知できたような雰囲気はさすがブロマンス。
亮兄は親指を立て、穏やかに微笑みながら自室へ消えた。リビングで、再びふたりきりに。
彰さんはソファに座ろうかと目で合図した。私たちはソファに並んで座った。そして彰さんは軽く体をこちら側に向けると、真剣な眼差しになる。
そして彰さんがなんと「失礼します」と小声で言いながら、私の手を握ってきた!
心臓が跳ね上がり、もう隠せないほどに緊張がすごくて、100メートルを全力で走った後みたいに呼吸が荒くなる。
「自分も、茜ちゃんの笑顔をもっと見ていたいから……茜ちゃんは毎日楽しく過ごして、幸せでいてほしい。つまり、茜ちゃんも自分の前ではたくさん笑顔でいてほしい」
彰さんは再び柔らかく目を細めて微笑んだ。今度は余裕のない笑みだった。その笑顔も好きだ。
国宝的イケオジアイドルの微笑みは、どれも完璧で華やかだった。
私がずっと大好きだった、この笑顔たち。本当にこれからはもっと拝めるの?
――生きてて良かった~!!
私はその笑顔を間近で見つめながら、涙が零れそうになるのを堪えた。
あたたかい日差しが、リビングを優しく照らしていた。
*
それからというもの、彰さんは私とふたりきりでいるときだけ、少し照れくさそうに笑うようになった。営業スマイルではない、私にだけ見せる笑顔。
爽やかで素敵なイケオジスマイル♡
これからの人生、嫌なことがあっても彰さんと笑顔を交わせば乗り越えられる気がする。
「彰さん、今日も素敵で尊いスマイルありがとうございます!」
「何、そんなにあらたまってしまって……こちらこそ、ありがとう!」
笑顔をいただいたから、私も笑顔を返す。
その時に出せる最大の笑顔を。
彰さんが褒めてくれた笑顔を。
好きな人と一緒に笑顔になると、幸せが増すよね。
優しく微笑む彰さんを真剣に見つめた。
あぁ、尊い。
笑顔もだけど、全てが愛しい。
ああああああああ、もう!!
――本当に大好きです、彰さん。
☆。.:*・゜
「あれ? 亮兄がいない……」
「飲み物を買いに行ったよ」
「そっか」
ということは今、彰さんとふたりきり。料理全てを並べて席に着き、ふたりで沈黙していたら彰さんが口を開いた。
「さっきは、ありがとうね」
「……ど、どれのこと?」
「無敵素敵スマイルと褒めてくれて。正直言うと、自信がなかったから……自分の笑顔に」
――嘘だぁ!!!!!!!!
全私の細胞が叫んだ。ビックリマークも溢れ出す。だけど、彰さんは本当に自信がなかったのかもしれない。自信を持つべきだ。本当に威力溢れる笑顔なのだから。
「綺麗なんです……歯並びが」
「歯並びが?」
好きな人に気持ちを素直に伝えるのは世界一緊張する。だけど、伝えたい。
私が真面目な顔をして話をする時はいつも前のめりになり一緒に真面目な表情になってくれる彰さん。今も真剣に話を聞いてくれる雰囲気。
「あ、あのですね……」
私は口角を上げて笑った顔を作る。緊張して不自然な顔してそうな気がする。多分、目が笑っていなくて顎がいつもよりも前に出ている顔。本当は、彰さんの前ではできるだけ可愛くてキラキラしている私でいたい。だけど、今は気持ちを伝えるのが大切だから。私は顔をそのままにしてジェスチャーも交えながら話を続けた。
「彰さんは笑顔の時のこことここの隙間が狭く、歯の列が長く見えるのです」
私は自分の頬と歯の間あたりを指さした。
彰さんは頷く。普段つけているコンタクトを今はつけていないから、目を若干細めて真剣に私にピントを合わせてくれているっぽい。私の仕草を確認するために――。
「綺麗に並んだ白い歯は、どの歯も彰さんのように主張しすぎずに綺麗に整列していて、小顔美人に合わせた小さめサイズで……全体の、その目の小じわも含めて、とにかく彰さんの笑顔な姿が尊くて、ずっと好っき……」
あぶないあぶない、勢いで完全告白を実行するところだった。あれ、もしかして好きって言っちゃったかも?
どうしよう。
私は頭を抱えながら下を向く。
言い過ぎたかもだけど、日頃思っていることはきちんと言葉にして伝えられたかな。緊張もしたけれど、少しすっきりもしている。ところで、彰さんの反応は?
開いた手のひらの隙間から彰さんを覗いてみる。あっ……彰さんも頭を抱えながら下を向いている。
「あの、彰さん?」
「……参ったな」
彰さんはゆっくり顔を上げ、私と視線を合わせた。コンタクトを外した瞳は再び真剣に私を見てくれているためにわずかに細められている。
「茜ちゃんに、自分の歯並びを……いや、笑顔を、そこまで細かく愛おしそうに語られるとは思わなかった。照れるじゃないか」
彰さんはいつもと同じように穏やかなトーンで言葉を発したけれど、耳のあたりがほんのり赤かった。
普段見ないその雰囲気に私の顔も心も震えた。
「さっき、キッチンで言った言葉……覚えているか?」
「『涙を流しているより、茜ちゃんの笑顔が素敵だと思うし、好きだから』……ですか?」
「そう、一文字も間違えていない。記憶力がすごいね」
彰さんは静かに頷いた。
「自分は、茜ちゃんをただ可愛い妹のように思っていたつもりだった……だが、どうやらそれは勘違いだったのかもしれない」
「えっ?」
何それ、意味深すぎる言葉――。
「自分でも気づかないうちに、違う感情になっていたらしい。今、分かった」
彰さんはゆっくり近付いてきた。触れられないけれど、温もりが伝わってくる距離に今いるし、こんな雰囲気だし……。
あぁ、平常心なんてもう無理!
「茜ちゃんが自分の笑顔を、そこまで好きだと言ってくれるなら……これからは、もっとお見せたいと思う」
真剣な表情。静かだけど熱い情熱がじんわりと伝わってきた。彰さんは嘘が嫌いだ。ということは、彰さんは確実に実行する。
私は胸がいっぱいになって、言葉が出てこない。
彰さんはそんな私をじっと見つめ、早速歯を見せ、柔らかい笑みを浮かべてくれた。
「茜ちゃん、自分の笑顔と交換?とでも言えばいいのか分からないが……ひとつこちらからのお願いも聞いてほしい」
「はい、何でしょうか」
その時、タイミング悪く玄関の鍵が回る音がした。
「ただいまー。飲み物買ってきたよ」 と、亮兄の明るい声が響く。
彰さんはゆっくり立ち上がった。
「亮、悪い。少し茜ちゃんと話がある」
今の彰さんの言い方は、全く違うけれども、妹さんとお付き合いさせてくださいみたいなトーンに似ている。亮兄は袋をテーブルに置くと、こちらを見て一瞬目を丸くし、すぐに優しい笑顔になった。
「……分かった、自分の部屋でゆっくりしてるよ」
特に理由を聞かず、でも内容を察知できたような雰囲気はさすがブロマンス。
亮兄は親指を立て、穏やかに微笑みながら自室へ消えた。リビングで、再びふたりきりに。
彰さんはソファに座ろうかと目で合図した。私たちはソファに並んで座った。そして彰さんは軽く体をこちら側に向けると、真剣な眼差しになる。
そして彰さんがなんと「失礼します」と小声で言いながら、私の手を握ってきた!
心臓が跳ね上がり、もう隠せないほどに緊張がすごくて、100メートルを全力で走った後みたいに呼吸が荒くなる。
「自分も、茜ちゃんの笑顔をもっと見ていたいから……茜ちゃんは毎日楽しく過ごして、幸せでいてほしい。つまり、茜ちゃんも自分の前ではたくさん笑顔でいてほしい」
彰さんは再び柔らかく目を細めて微笑んだ。今度は余裕のない笑みだった。その笑顔も好きだ。
国宝的イケオジアイドルの微笑みは、どれも完璧で華やかだった。
私がずっと大好きだった、この笑顔たち。本当にこれからはもっと拝めるの?
――生きてて良かった~!!
私はその笑顔を間近で見つめながら、涙が零れそうになるのを堪えた。
あたたかい日差しが、リビングを優しく照らしていた。
*
それからというもの、彰さんは私とふたりきりでいるときだけ、少し照れくさそうに笑うようになった。営業スマイルではない、私にだけ見せる笑顔。
爽やかで素敵なイケオジスマイル♡
これからの人生、嫌なことがあっても彰さんと笑顔を交わせば乗り越えられる気がする。
「彰さん、今日も素敵で尊いスマイルありがとうございます!」
「何、そんなにあらたまってしまって……こちらこそ、ありがとう!」
笑顔をいただいたから、私も笑顔を返す。
その時に出せる最大の笑顔を。
彰さんが褒めてくれた笑顔を。
好きな人と一緒に笑顔になると、幸せが増すよね。
優しく微笑む彰さんを真剣に見つめた。
あぁ、尊い。
笑顔もだけど、全てが愛しい。
ああああああああ、もう!!
――本当に大好きです、彰さん。
☆。.:*・゜


