声、好きです。……って告白じゃなかったのに!?
「……ねえ、まな」
急にトーンを落とした彼の声が、鼓膜を優しく撫でる。
あまりに甘い響きに、思わず背筋がゾクっと震えた。
「は、はいっ」
「俺も、まなが好きだよ」
思考が真っ白になる。
彼が口にした「好き」という二文字。
それが心臓に直接触れられたような感覚に陥って、私は慌てて言葉を絞り出した。
「え、と……声、ですよね。ありがとうございます、私も綾人くんの声、本当に大好きで……っ」
必死にファンとしての感謝を伝えると、受話器の向こうで彼が小さく笑った気配がした。
「……ふふっ、そうだね。声も、もちろん大好きだよ」
その含みを持たせた言い方に、心臓の鼓動がさらに早くなる。
彼は、私の言葉をどう受け取ったんだろう。
優しくて、どこか危うい温度を帯びたその声に、私はますます逃げ場を失っていく。
「声も好き。だけど、俺はまなの全部が好き。一人の女の子として好き。俺の好きは、恋愛対象の意味の好き」
「……っ!」
耳元で、甘く、けれど逃げ場のないほどはっきりと宣言される。高すぎず低すぎない、世界で一番大好きなあの優しい声で、こんなにも破壊力のある言葉を向けられるなんて。
(……そんなに『好き』を連呼しないでいただきたい……っ!)
心の中で叫んでも、熱くなった顔はどうにもならない。
彼が言葉を重ねるたびに、心臓が爆発しそうなほど跳ね上がる。
ファンとしての「好き」と、彼が突きつけてきた「好き」の重さの違いに、私はめまいを覚えた。
「……まな?黙っちゃってどうしたの。恥ずかしくて顔赤くなってるとか?」
「……っ、そ、そんなこと……!」
図星を突かれて、ますます言葉が詰まる。
受話器越しに聞こえる彼の笑い声さえ、今は私を溶かすための甘い罠にしか聞こえなかった。