声、好きです。……って告白じゃなかったのに!?
第2話:推しが目の前
「行きません、会えません」
……なんて。あの時テンパっていた私が、そんな強い言葉を言えるはずもなかった。
結局、「分かりました」と小さな声で承諾して電話を切る以外、私に逃げ道なんて残されていなかったのだ。
翌朝。少しでも可愛く見えるようにと、普段はあまり着ないようなミニスカートを選んで鏡の前に立つ。
見慣れない自分の姿に気恥ずかしさを感じながら、スマートフォンを握りしめ、約束の時間に遅れないように家を出た。
指定された場所に着いてからも、緊張でどうしても落ち着かない。私は公園の隅にあるベンチに腰を下ろし、一人で足を抱えるようにして、ただ彼が来るのを待つことしかできなかった。
「ごめんお待たせっ! 大丈夫? 寒くなかった?」
その瞬間、耳に飛び込んできたのは、ずっと画面越しに恋焦がれていたあの優しい声。
でも、今はスピーカーを通したデジタルな音じゃない。
すぐ近くで空気を震わせ、私の肌に直接届く、温かな「生の」声だった。
「……あや、と、くん……?」
恐る恐る顔を上げると、そこには想像以上に素敵な彼が立っていた。
「うん。まな、声だけじゃなく実物も可愛いなんてね。ずるいよ」
眩しそうに目を細めて笑う彼。そんな単純な、けれどストレートな褒め言葉に、私の顔は一気に熱を帯びていく。
「あ、綾人くんもっ……背が高くて、かっこよくて……ずるい、です……」
精一杯の反論を口にするけれど、私の視線は泳いでしまう。至近距離で聴く彼の声は、スマートフォンのスピーカー越しよりもずっと深くて、優しくて。
逃げ出したいほど緊張しているのに、もっと近くで聴いていたいと思ってしまう。
「……ははっ、ずるいか。お互い様だね」
彼はそう言うと、私の隣に座り、少しだけ距離を詰めた。
公園の柔らかな空気の中に、彼の香りと、あの心地よい癒やしの声が満ちていく。