声、好きです。……って告白じゃなかったのに!?
「で、でも、私がいたら配信が……それに、付き合ってもないのに一緒に住むなんて、そんなの……」
常識を必死にかき集めて反論する私を、彼は可笑しそうに、けれど熱を孕んだ瞳で見つめ返した。
「俺、飽き性だから。配信アカウントを消すことに躊躇いはないよ。あんなの、まなの声が聴けるならもう必要ないし」
「……っ、そんな」
何千人ものリスナーが待っている場所を、そんな簡単に捨ててしまうなんて。呆然とする私に、彼はさらに距離を詰め、耳元で囁きを重ねた。
「付き合う前に一緒に住むのが嫌なら、今ここで付き合っちゃえばいい」
「え……」
「これでもう、問題ないでしょ?まなは俺の彼女で、俺はまなの彼氏。だから、これからはずっと隣で声を聴かせて」
優しくて心地よいはずの彼の声が、今は逃げ場を完全に塞ぐ鎖のように響く。けれど、その鎖を心地よいと感じ始めてしまっている自分に、私は震えることしかできなかった。
「だめかな。俺はもう、まなを独り占めしたい」
その言葉が呼び水になったように、視界が彼の胸元で遮られた。ふわっと鼻腔をくすぐる、石鹸のような優しい匂い。
驚きで思考が止まっていた私は、そこでようやく、自分が彼に強く抱きしめられていることに気がついた。
「……っ……」
厚い胸板から伝わってくる、彼自身の鼓動。
耳元で響くのは、大好きなはずの、けれど今まで聴いたことがないほど熱を帯びた「独占欲」の声だった。
「……ねえ、もう誰の声も聴かないで。俺だけを見て」
頭を撫でる大きな手のひらと、逃がさないと言わんばかりに背中に回された腕。
優しくて癒やされるはずの彼の声が、今は熱い吐息と共に私のすべてを支配していく。
「まなの声も、体も、全部俺のものにしていい……?」
もう、断る言葉なんて、とうに忘れてしまった。
私は彼の腕の中で、甘く蕩けるような声の温度に、ただ身を委ねるしかなかった。