声、好きです。……って告白じゃなかったのに!?
第3話:ぜんぶ、好き。
返事もできず固まったままの私に、彼は「ここじゃ寒いから場所を変えよう」と優しく提案した。
それに抗う術もなく、のこのこ着いてきてしまった場所は……。
「……本当に、家に来ちゃった」
通されたのは、画面の向こう側の彼がいつも過ごしている、整然とした彼の部屋だった。
「シャワー浴びてくるから、これ飲んで待ってて」
そう言って差し出されたのは、マグカップに入った淹れたてのミルクティー。一口含むと、柔らかな茶葉の香りと共に、しっとりとした甘さが口いっぱいに広がった。
甘さは普通のはずなのに、今の私には酷く甘ったるくて、そして驚くほど熱く感じる。それはきっと、ミルクティーの温度のせいだけじゃない。
部屋の中に満ちている彼の気配と、ついさっきまで耳元で囁かれていた甘い言葉の残響が、私の体を内側からじわじわと焦がしているからだ。
「……どうしよう。本当に、逃げられない」
キッチンから聞こえる水の音さえ、今の私には彼に支配されている合図のように聞こえていた。
「お待たせ。ミルクティー、美味しかった?」
浴室から戻ってきた彼は、少し濡れた髪をタオルで拭きながら、柔らかく微笑んだ。その無防備な姿に、私は慌てて視線をマグカップに落とした。
「はい、すごく……」
「それはよかった」
彼は私の隣に腰を下ろすと、ふっと表情から笑みを消し、急に真剣な顔で私を見つめた。
「あのね、まな。……俺、本当はリスナーなんて、投げ銭してくれるように上手く扱えばいいだけの存在だと思ってたんだ」
耳を疑うような、とんでもない暴露。
画面越しに何千人ものファンを熱狂させていた彼の口から出た、あまりに冷ややかな本音に、私はビクリと体を震わせた。
手に持ったマグカップが、カタカタと小さく音を立てる。
目の前にいるのは、私の知っている「優しい綾人くん」のはずなのに。
その瞳の奥に潜んでいた真っ黒な感情に触れて、私は言葉を失った。