そのほくろに恋をした

幼馴染の恋心



「うわっ!?」
 曲がり角を曲がったところで誰かにぶつかった。

「雪?」
「修二……」
 私は慌てて顔を隠すも、修二は私の顔を見て表情を変えた。

「……社長か?」
 その声が怖いくらい低くて、私の知らない修二で、私はとっさに首を横に振った。

「違っ」
 修二は目を閉じ、深く息を吐いた。
 それから優しく私の頭を撫でる。

「……もういいから」
 その声があまりにも優しくて、私の涙腺が──崩壊した。

 ***

「……落ち着いたか」

 会社近くの公園。
 ベンチに座る私に、修二が温かいコーヒーを手渡す。

「……ありがと」
「珍しいな、お前がこんな泣くの」
「自分でもびっくりしてる」

 目が痛い。
 絶対ひどい顔。

「婚約、デマなんだって」
「そっか」
「でも、お似合いだった。それに、社長も何考えてるのかわからないし……」

 お前はそれでいいのかってどういうこと?
 社長はどうだってのよ。
 本当に、意味が分からない。

 胸が苦しい。
 考えるほどに自分に自信が無くなっていく。

「──俺なら泣かせない」
「へ?」
 突然降り注いだその言葉に顔を上げると、まっすぐ私を見る黒い双眸。

「俺……ずっと、雪が好きだった」
 意を決したように真剣な表情で紡がれた、予想もしていなかった言葉に、私は大きく目を見開く。

「お前の変な趣味も、空気読まないのも知ってる」
「悪口?」
「全部含めて好きなんだよ」

 ストレートなその告白に、既にいっぱいいっぱいだった脳が破裂しそう。
 フリーズ状態の私に、修二は少しだけ視線を落とした。

「でもさ……俺じゃないんだろ?」
「っ……」

 そうか。
 答えなんて、もう分かってる。私も、修二も。

 だって泣くほど苦しいのは──相手が”彼”だから。

「……社長がいい」
 思わず零れたその言葉に、修二が静かに目を閉じる。

「ごめ――」
「謝るなって。……最初から分かってたよ。お前、社長の話してる時だけ顔付き違うから」
 困ったように笑った修二に、私は大きく目を見開いた。

 そして修二は立ち上がると、私の頭をぐしゃぐしゃ撫でて笑った。

「なら、ちゃんとぶつかれ」
「え?」
「逃げんな。──ちゃんと、捕まえてこい」
 複雑な表情で伝えられるそのエールに、胸が熱くなる。

「修二……っ、うん!!」

 修二は真っ直ぐぶつかってくれた。

 なら、私も──っ。
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