好きになった人は、みんなのアイドルで 3

51話 手放したくない

ーー悠太郎サイド

「じゃあ、二人で話して」
「お母さんは下で耳塞いでるから、安心して」
母さんの声がする。
……なんで。なんで帰してくれなかったんだ。

「悠太郎くん」

ずっと聞きたかった紬ちゃんの声がする。
それだけで涙が出る。

「あのね、そのままでいいから聞いて」

「ごめんね、勝手に会いに来て」
「蓮くんから、悠太郎くんが日本にいるかもって聞いて」
「居ても立ってもいられなくて、新幹線飛び乗っちゃった」

紬ちゃん、後先考えずに行動するタイプじゃないじゃん。
……なんで、俺のために。

「ネットニュースも、見たよ」
「辛かったよね。ごめん、私、何の力にもなれなくて」
「脳天気なLINEばっかりして、嫌だったよね」

調べたんだ。……もう、知ってるのか。
……ごめん。嫌だから返さなかったんじゃない。
紬ちゃんに、連絡する資格なんか、俺にはなくて。

「……でもね、言ってほしかった」
「1番辛い時に、そばにいるのは私が良かった」

紬ちゃんの声が震える。

「私はね、悠太郎くんが、アイドルでも、アイドルじゃなくても、悠太郎くんが好きなの」
「悠太郎くんの隣は、私がいいの」

……どうして。どうしてそんなに俺のこと。
俺はもう、何者でもないのに。

「ごめんね、それだけ言いたくて」
「どんな悠太郎くんでも大好きだよって、言いたくて」

……どんな俺でも好き?本当に?
本当に、こんなかっこ悪い俺のことも、受け入れてくれる?

「私のこと、嫌いになったんじゃなかったら、また会いに来るから」
「急に来てごめんね」
「……またね」

嫌いになるわけない。
……紬ちゃん、待って。

ドアの前で足がすくむ。
……本当に、本当に、こんな俺でも。

アイドルの夢はこの手からこぼれ落ちたけど、
紬ちゃんのことは、手放したくなかった。

こんなかっこ悪い俺でごめん。

ガチャ
ドアを開ける。
振り向いた紬ちゃんも、俺と同じように、涙でぐちゃぐちゃだった。
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