好きになった人は、みんなのアイドルで 3

57話 ヒーロー

悠太郎くんが着替えに行っている間、
悠太郎くんのお母さんと二人きりになる。

「悠太郎のこと、好きになってくれてありがとう 」

「……え?そんな、私の方こそ……」

「悠太郎、私から見ても優しい子だけど、頑固なとこもあるでしょう?」
「不器用というか……」
「アイドルの夢だけずっと見てたから」

「……はい、そんなところも、好きです」

ふふっと嬉しそうに笑って悠太郎くんのお母さんは続ける。
「朝比奈さんと出会ってから、悠太郎の顔が柔らかくなったの」
「ずっとアイドルのために、どこか張り詰めていたけど」
「年相応の男の子になったっていうか」

「……夢の邪魔になるかもっていつも不安でした」
「でも、一緒にいたくて」

「これからもよろしくね、悠太郎のこと」

「は、はい……!こちらこそです!」

「ちょっと、母さん紬ちゃんに俺の変な話とかしてないよね 」
悠太郎くんが戻ってくる。

「してないわよ、これからもよろしくねって」

「ほんと?」と聞いてくるから
「うん」と頷く。

「じゃあ、駅まで送る」

「突然お邪魔してすみませんでした」
「それなのにこんなに長居して……」
「紅茶もレモネードも美味しかったです、ありがとうございました」

「また来てね」
「今度はゆっくり来て?お夕飯一緒に食べましょ」

「はい、ありがとうございます」

悠太郎くんの家を出る。
外はすっかり暗くなっていて、少しひんやりした。

悠太郎くんが手を繋いでくる。
いつぶりだろう。

「……思い切って、来て良かった」

「うん、でもびっくりした」

「私も」

顔を見合わせて笑う。

「来てくれてありがとう」
抱き締められる。
「紬ちゃんは俺の、ヒーローだ」

「なにそれ、そんなにすごいことしてないよ」

「紬ちゃんに、救われてるんだよ。いつも」

「私の方が、救われてるよ」

どちらからともなくキスをする。

街灯に照らされて、二人だけの世界みたいだった。

「家着いたら連絡してね」
「絶対すぐ返すから」

「うん、離れてても連絡取ろうね」

悠太郎くんはもう大丈夫。
前に進んで行けると思った。
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