好きになった人は、みんなのアイドルで 3

99話 あと数時間

ーー悠太郎サイド

「味見して」
パウンドケーキの切れ端が出てくる。

「うん、美味い」
「……けどさ、昼食べてから帰ってくるって言ったよね?」
「紬にどれだけ食べさせる気?」

「……やっぱり?」
「お母さん、つい作りすぎちゃった」
数種類のパウンドケーキが並ぶ。

「紬のこと、フードファイターだと思ってる?」

「ごめん、そうだと助かるかも」
母さんが笑う。

「……絶対食べきれないから、包んで持って帰ってもらお」
「紬は多分、喜ぶから」

ーー
絶対受けたい先生のダンスレッスンだったのに、
それより紬に早く会いたい気持ちの方が勝ってしまう。

……これじゃあだめだ。
頬を叩いて気合いを入れ直す。

「なに、気合い入ってんじゃん」
ダンス仲間に声を掛けられる。

「……今日、東京から彼女来るから」

「へえ、悠太郎、彼女とかいたんだ」

「うん、同じ大学の子」

「じゃあ韓国いる間も付き合ってたの?」

「そう」

「……よく彼女我慢したね」

ほんとにそう。紬はよく我慢してた。
泣き言も言わず、俺の夢をずっと応援してくれて。

俺なんかより、そばにいて紬のこと支えてくれる男だっているはずなのに。

それでも紬が俺を選んでくれたことが嬉しかった。

あと数時間後には紬に会える。
「よっしゃ!頑張ろ!」

ウォーミングアップを始めた。
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