敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
胸の奥が弾んでいるのが分かる。
久登とはろくに話したことはないが、彼の黒曜石の瞳は思慮深く、奥から放つ優しい光に花梨は見惚れた。
それは自分だけでなく、多くの女性はそう思うと分かりきっている。
彼のような容姿端麗で名家の息子と超一般人の自分が、仲良くなりたいとは恐れ多くて言えない。
だが、彼の中身を少しだけ覗いてみたい、もう少しだけ話せるようになってみたい。そんな微かな欲求が、彼女の中で育ち始めていた。
好奇心と憧れ、そして名前のない、何か。
「……君は、料理を担当することはあるのか?」
お会計が終わり、カードを久登の席へ持っていく。すると、彼の方から不意に声をかけられた。
久登は表情を変えないまま、じっと花梨を見つめている。
彼の視線を独り占めしていると思うと、体の芯からじんわりと熱くなってくる。
『あ……はい。本日のスープ、少し前から私が担当しています』
照れながらもはっきりと告げると、彼は思いがけなかったのか動きを止めた。
『……そうだったのか。いつも、ありがとう』
『え……?』
驚く花梨に、彼はそれ以上何も言わず視線を外して席を立った。
『ご馳走様。また、来ます』
『須天様、ありがとうございました。お気をつけて』
スーツのジャケットを片手に持ち、静かに立ち上がった久登は、オーナーと料理長に一瞬だけ視線を送り、そのまま店をあとにした。
花梨の暴れた心臓の音は、収まる気配がない。
いつも必要最低限の会話の彼が、初めて少しだけ踏み込んだやりとりをしてきた。
自分に興味を持ってくれたことが素直に嬉しかった。そして、いつも頼んでくれるスープを作っていると、伝えられたのも。
(ありがとう、って言ってくれた。どういう意味なんだろう)
分からないような、分かるような曖昧なお礼だったが、あの〝ありがとう〟は、自分に向けられているものだというのは伝わる。
顔が熱い。ついでに、心まで。
久登とはろくに話したことはないが、彼の黒曜石の瞳は思慮深く、奥から放つ優しい光に花梨は見惚れた。
それは自分だけでなく、多くの女性はそう思うと分かりきっている。
彼のような容姿端麗で名家の息子と超一般人の自分が、仲良くなりたいとは恐れ多くて言えない。
だが、彼の中身を少しだけ覗いてみたい、もう少しだけ話せるようになってみたい。そんな微かな欲求が、彼女の中で育ち始めていた。
好奇心と憧れ、そして名前のない、何か。
「……君は、料理を担当することはあるのか?」
お会計が終わり、カードを久登の席へ持っていく。すると、彼の方から不意に声をかけられた。
久登は表情を変えないまま、じっと花梨を見つめている。
彼の視線を独り占めしていると思うと、体の芯からじんわりと熱くなってくる。
『あ……はい。本日のスープ、少し前から私が担当しています』
照れながらもはっきりと告げると、彼は思いがけなかったのか動きを止めた。
『……そうだったのか。いつも、ありがとう』
『え……?』
驚く花梨に、彼はそれ以上何も言わず視線を外して席を立った。
『ご馳走様。また、来ます』
『須天様、ありがとうございました。お気をつけて』
スーツのジャケットを片手に持ち、静かに立ち上がった久登は、オーナーと料理長に一瞬だけ視線を送り、そのまま店をあとにした。
花梨の暴れた心臓の音は、収まる気配がない。
いつも必要最低限の会話の彼が、初めて少しだけ踏み込んだやりとりをしてきた。
自分に興味を持ってくれたことが素直に嬉しかった。そして、いつも頼んでくれるスープを作っていると、伝えられたのも。
(ありがとう、って言ってくれた。どういう意味なんだろう)
分からないような、分かるような曖昧なお礼だったが、あの〝ありがとう〟は、自分に向けられているものだというのは伝わる。
顔が熱い。ついでに、心まで。