敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
思わず受け取ったそれは、見るからに上質そうなペンで、花梨は少しだけ気後れする。
だが久登はすでにこちらを見ず、父親と会話を始めてしまった。
ぶっきらぼうな振舞いではあるが、こんなふうに自然に手を差し伸べてくれるとは、親切な人で間違いない。
彼の思いがけない優しさに触れ、花梨の胸の奥がわずかに揺れた。
(須天さんの息子さん、本当は優しい人なのかも?)
それから忘れたころに、久登は突然ONODERAを訪れた。その一度だけかと思ったが、週に一度、ひっそりと来店するようになった。
客観的に父親の須天との仲は良好なようには見えなかったが、やはり血の繋がった親子。ONODERAの味が気に入ったらしい。
久登が来店するのは、決まって夜も深まり、客足が落ち着き始めた頃だ。須天の来店時と被らないように、気を遣ってなのかもしれない。
注文する料理は、いつも同じ。前菜に季節野菜のテリーヌ。メインは鴨胸肉のローストの赤ワインソース。そして最後に、あえて“本日のスープ”を楽しむのが彼のこだわりだった。
『本日は……仁科産の白かぶを使ったポタージュです』
花梨が食前酒を嗜む久登に伝えると、彼は小さく頷く。
『……では、それで』
『かしこまりました』
料理について深く尋ねられることはない。
けれど、スープが運ばれると久登は必ず、一口目をゆっくりと口に含んで、そっと目を閉じて味わう。
花梨はその横顔を見るのが、好きだった。
というのも、自身がじっくりと時間をかけ野菜を煮て甘みを引き出していたからだ。
本日の白かぶのポタージュは、初めて花梨がオーナーと共同で開発したもの。
少量の生クリームでまとめ、素朴で優しい味わいを心掛けた。
(また、久登さん頼んでくれた。嬉しいな)
だが久登はすでにこちらを見ず、父親と会話を始めてしまった。
ぶっきらぼうな振舞いではあるが、こんなふうに自然に手を差し伸べてくれるとは、親切な人で間違いない。
彼の思いがけない優しさに触れ、花梨の胸の奥がわずかに揺れた。
(須天さんの息子さん、本当は優しい人なのかも?)
それから忘れたころに、久登は突然ONODERAを訪れた。その一度だけかと思ったが、週に一度、ひっそりと来店するようになった。
客観的に父親の須天との仲は良好なようには見えなかったが、やはり血の繋がった親子。ONODERAの味が気に入ったらしい。
久登が来店するのは、決まって夜も深まり、客足が落ち着き始めた頃だ。須天の来店時と被らないように、気を遣ってなのかもしれない。
注文する料理は、いつも同じ。前菜に季節野菜のテリーヌ。メインは鴨胸肉のローストの赤ワインソース。そして最後に、あえて“本日のスープ”を楽しむのが彼のこだわりだった。
『本日は……仁科産の白かぶを使ったポタージュです』
花梨が食前酒を嗜む久登に伝えると、彼は小さく頷く。
『……では、それで』
『かしこまりました』
料理について深く尋ねられることはない。
けれど、スープが運ばれると久登は必ず、一口目をゆっくりと口に含んで、そっと目を閉じて味わう。
花梨はその横顔を見るのが、好きだった。
というのも、自身がじっくりと時間をかけ野菜を煮て甘みを引き出していたからだ。
本日の白かぶのポタージュは、初めて花梨がオーナーと共同で開発したもの。
少量の生クリームでまとめ、素朴で優しい味わいを心掛けた。
(また、久登さん頼んでくれた。嬉しいな)