敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
◆初対面


「ままー、おそらみてー!」
「みぃつけたー!」

花梨は右手で大翔、左手で大輝と手を繋ぎ、いつもの保育園の帰り道を歩いていた。
ふたりは無邪気な笑顔で空を見上げ、小さな人差し指を揃えるようにして、淡い紫を帯び始めた夕空を指さす。
花梨も足を止め、双子の視線を追った。

「あ……飛行機」

遥か遠く、小さな白い点がゆっくりと進み、あとから細長い飛行機雲が空に引かれていく。
大翔と大輝は、どんなに小さな機影でも必ず見つけて、こうして教えてくれる。
そう――ふたりも、久登と同じように、空を見るのが好きだった。
花梨が意識して教えたわけでもない。
それなのに、彼らは車よりも電車よりも、迷いなく飛行機に惹かれていった。

(血は、争えないね……久登さん)

胸の奥で、彼にそっと語りかける。
双子が生まれる前、寂しさに耐えられなくなると、花梨はよく空を見上げていた。
少し独りよがりな考えかもしれないが、久登が見ている空と、今ここに広がる空がどこかで繋がっていると思うだけで、心は不思議と落ち着いた。
この四年間、久登を思い出すと、切なさと同時に優しい気持ちになるのは、裏切り以上に、彼が自分にくれたものが大きかったのだろうと花梨は思った。
せめて、彼が父親の監視の目から離れ、自由に生きていてくれたら……そう願ってはいたが、まさか、空に一番近い職業であるパイロットになっているとは夢にも思わなかった。

(久登さんも、私のことを覚えている様子だった)

すでに四年という長い年月が過ぎていたにも関わらず、彼は迷いなく自分の名前を呼んだ。そして何か話したげな表情を浮かべていた。
花梨は彼に再会してはいけないと分かっている一方で、今でも忘れられなかった相手が目の前に現れ、どうしても心が揺れてしまう。

(でも、久登さんにはあのとき、婚約者がいた。きっともう別の家庭を持っているわよね)

絶対に邪魔をしてはいけない。子供たちと血の繋がりはあるが、赤の他人として生きていくのが、互いにとって最善策なのだ。――花梨はそう自分に言い聞かせる。

「ままぁ、どうちたの……?」
「へ?」
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